未来の15日

未来短歌会の歌稿締め切りは、毎月15日である。
私は入会してからこのかた、一度も欠詠をせず、締め切りも毎月きちんと守っている。
締め切りの10日前までに10首揃えておいて、それから推敲・清書をした後、一週間前には郵便ポストへ投函するように心がけている。
青森から名古屋、その道中で郵便配達人の身に何が起こるかわからないので、たぶんに余裕を持とうと思ってのことだ。

ここだけ聞くと、ずいぶん優等生さんのように思われるかもしれないが、ただ単に、小心者の性格だからである。
彗星集(加藤治郎選歌欄)の歌会などで治郎先生にお会いした際、締め切りが守られていることを何度か褒めていただいて、 もうそれだけで、私の心はかろやかに救われる。
他の彗星集のメンバーから、締め切りを守るのに苦労しているという話をしているのを聞くと、 私にはそういう感覚が元々希薄なことに気づく。
締め切りに追われて、切羽詰まるという感覚が。

それはいま、私が安定感のある人間だからなのかもしれないと思う。
情緒の安定、家庭生活の安定、仕事の安定。
あえて「いま」と言ったのは、こうした安定感は現在、私が置かれている環境によるもので、 私の性質そのものが穏やかで堅実であるというわけではないからだ。
もし、家族の誰かが重い病気になったら。
もし、いまよりももっともっと仕事が忙しくなったら。
もし、周囲が目に入らないほどの大恋愛(失恋)をしたら。
いまのように、締め切りを守って送稿できるだろうか。

ここ数年、幸福にも平らかな道を歩くことができたが、この先の道にはきっと、 巨大な穴ぼこやゴツゴツとした落石が現れることもあるだろう。
そんなとき、「短歌」が救命ロープやハシゴや発煙筒に形を変え、私を助けてくれますように。
願いを込めて、今月もまた、封筒にできるだけまっすぐ、切手を貼りつけるのだ。

2006年12月7日

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2006年12月


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