001:空

[3622]みうらしんじさん

人ひとり分の空間埋めるためぼくは生まれてきたのに過ぎぬ

一読して、それからずっと頭の中に残っていた一首。
うん、そうなのかもしれないなぁ。
誰しもがみな「人ひとり分の空間埋めるため」に生まれて、そういう人たちが集まって、社会が構成されているのかもしれない。
と、「〜に過ぎぬ」という口調を少し切なく思いながら。
しかし同時に、「ひとり分の空間」は確実にその人のために空けられていたのだということに、安心もまたしたのです。
生まれてきた日から人にはそれぞれちゃんと居場所があるのだな、と。

 

[924]ヨシノタマキさん

ほらあそこながれてゆくよヒトガタが あをいあをい黄泉だね空は

幻想的な情景が美しい。
しかし幻想的でありながら、作中主体はこの風景を日常の世界から見ているように感じます。
ここで言う「ヒトガタ」とは、形代のこと。
誰かの身代わりとなって川を流れる薄い紙から、空へとふいに視線を移すと、そこには「あをいあをい黄泉」が見えたのでしょう。
空の青色と、黄泉の文字の「黄」のイメージが交わります。
また、話しかけるような口調がこの世界観によく合っていると思います。

 

[830]ふらっとさん

たっぷりのみるく溶かした空いろに紛れるほどに染まりたい午後

私も染まりたい。なんて素敵な午後のひととき。
ロイヤルミルクティーを飲み、リクライニングチェアーに包まれるように座りながら、まどろんでいるような気持ちになります。
上句「たっぷりのみるく溶かした空いろに」という表現にひかれました。
そう、空がそういう色をしている日ってありますよね。
この表現を思いつくかどうか。それがセンスだと思います。
ただ、ミルクや空色の「色」がひらがなになっている必要性が私にはいまいち感じられませんでした。うーん。
あと、「紛れる」という言葉に、どこか消極的なイメージを持ったのですが、 その点は作者の意図があるのでしょうか。

 

[527]高澤志帆さん

異界からの手紙のやうに三月の空から届く白き花びら

この歌は、読んですぐに情景が目に浮かびました。
ふと窓を開けたときに、どこからか舞い降りてきた白い小さな花びら。
それをつかみ取ろうと、すっと手を差しのべてみる。
多分何てことはない「白き花びら」(桜?)を、まるで非日常の不思議な存在=「異界からの手紙」と表している点がユニーク。
三月と白と花びらって、言葉のイメージが合うなぁ。
ただ、ゆっくり読み返してみると、「異界から」「三月の空から」と、〜からが二重になっている点が気になります。
これでは「異界=三月の空」という意味に取れてしまうのでは。

 

[484]しんくわさん

空を飛ぶペリカンたちと自転車の後ろに乗せたペンギン南へ

しんくわさんがお好きなペンギンの歌。
同じ「ぺ」から始まる、ペリカンとペンギンの音が楽しいです。
詠われている情景が、おとぎ話の一場面のようで愛らしい。
最後の「ペンギン南へ」の言い切りが、まるでこれから冒険に出るような(主人公はペンギン)ファンタジーを感じます。
自転車を漕いでいるのは誰?私(僕)?
ペンギンに主役を持っていかれて、すっかり影が薄くなってしまった人間でしょうか。

<<                                      >>

001    011
002    012
003    013
004    014
005    015
006    016
007    017
008    018
009    019
010    020

021    031
022    032
023    033
024    034
025    035
026    036
027    037
028    038
029    039
030    040

041    051
042    052
043    053
044    054
045    055
046    056
047    057
048    058
049    059
050    060

061    071
062    072
063    073
064    074
065    075
066    076
067    077
068    078
069    079
070    080

081    091
082    092
083    093
084    094
085    095
086    096
087    097
088    098
089    099
090    100

back


© Umi Sato All Rights Reserved.