004:ぬくもり

[7428]伴風花さん

ぬくもりのかたち あなたの掌がわたしの頬を挟みこむとき

とてもシンプルで優しく、「ぬくもり」のある一首。
誰かの頬を包み込むように触れる、その「掌」の形こそ、目に見えない「ぬくもり」の形そのものなのですね。
それは恋人同士でも、親子でも、友達同士でもいい。
時代を越えた、共通のぬくもり感が「掌」の中に封じ込められているように感じました。

 

[502]しんくわさん

冷やされた郵便配達人の手を温めるオスセイウチの脇のぬくもり

しんくわさんは動物の出し方がとてもうまいです。
「オスセイウチ」…私だったらなかなか詠まない単語です。
だってセイウチ、しかもオス。
むちむちとした脇はいかにも湿っていそうです。
この一首は映像がすぐに浮かんできて、私には妙に心温まるシーンに感じられました。
定型詩と出会った、不条理さとユーモアのバランスのよさ。
数を読んでいるうちに、しんくわさんの短歌世界にどんどんはまっていく感覚を覚えます。

 

[1428]杉山理紀さん

ぬくもりを聞き返すようにふれてみた雨明け方の深い呼吸を

ぬくもりを「聞き返す」というのは、どういう状態を表しているのだろう。
うーん、考えてみたけれどよくわからない。
「ぬくもり」と「雨明け方の深い呼吸」、どちらも「〜を」目的語になっているので、文章がねじれているような印象を受けます。
「ふれてみた」にかかるのなら、「〜呼吸に」だろうし。
しかし、その少し不可解な部分が、この一首の世界観をつくり出しているのだと思います。

 

[1769]斉藤そよさん

ゆきよゆき絶対的な肯定がぬくもりよりもほしい夜です

そんな冬の夜。
でも、絶対的な肯定が、ぬくもりに包まれてやって来たら。
とてもぐっすり眠れるだろうなぁ。
自分のことを絶対的・全面的に肯定してくれる他者に出会うこと、それが人の生きている目的なのでは…と考えさせられました。
初句「ゆきよゆき」というひらがな表記の呼びかけが、こんなに切実な思いを詠った歌に温かみを与えています。

 

[1791] 山下好美さん

あなたから言葉をかけてほしいだけ薄きマフラーほどのぬくもり

悲しい歌。恋の終わりを感じました。
本当は、恋の始まりや片想いを詠っているのかもしれませんが。
作中主体は若い女性、というか過去の自分自身を想定して読んでしまいました。
求めてはいけないものばかりが多くなって、でもせめて「言葉」だけ。
それも、優しい言葉じゃなくていい。
ほんの少しの、「薄きマフラー」ほどの軽量でいいから。
なんて悲しい、そして愚かしい(決して悪い意味ではなく)恋心。
胸がぎゅっと締めつけられました。
ただ、全体的に口語体の一首の中で、文語体の「薄き」が浮いているように感じました。
ここは「薄い」と言ったほうが、私がイメージした作中主体の年齢には合っていると思いました。

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