005:名前

[7867]岡村知昭さん

ミカエルと名乗る大きな男から名前を付けてもらう警官

なんとも不思議な世界観。
ミカエルとは大天使ミカエルのことでしょうか。
大天使から想像されるきらびやかで神々しい形容詞ではなく、「大きな男」という身の蓋もない感じが面白いです。
そのミカエルから「名前を付けてもらう」彼には、名前がないわけではないのでしょう。
与えられるのは、新しい名前。一体、どんな名前なのか。
「警官」という設定の選択もまた面白い。
天使の大軍を率いてサタンと戦ったとされる大天使ミカエルが、警察官 (どこかの派出所で普段は道案内をしているような)に名前を与える。
物語のはじまりを感じさせます。

 

[2581]桐嶋清雅さん

あの人に名前を呼ばれる度あたし数ミリ単位で溶けていってる

現在進行形の恋愛の、高揚感と緊張感を表している一首。
「数ミリ単位で溶けてい」く、という表現が巧みです。
生まれてきてから、毎日誰かに、何万回と呼ばれる「名前」
当たり前のように受け入れてきたものなのに、ある特定の人の口から発声されると、 まるで魔法の言葉をかけられたかのように心が震える。
名前とは、一番身近な愛情表現の言葉になりうるのだと思います。

 

[8867]兵庫ユカさん

名前には柔らかい根が生えている 明日、わたしがいなくなっても

上句、このような表現の仕方があったとは。
どこか根付くところがないと、根は生えることができません。
ここでいう根付くところというのは、「わたし」の周りの人々の心のことなのでしょう。
下句がやや詩的すぎるかなという印象も受けたのですが、すっきりとした読後感です。
もしその人がいなくなっても、思い出や誰かにとってのその人の存在感は、 名前の響きとともにずっと、静かに確かに、心の中に根を張っていくのだと思います。

 

[10920]キタダヒロヒコさん

直歩六ヶ月。よく笑ひます。
直歩(なほ)、きみの名前を口にするひとがいつも笑つて呼びますやうに

ああ、なんて愛しい歌。
一首に溢れている暖かくて優しい気持ちが、読んでいる側にも流れ込んできます。
ちょっと泣きそう。お父さん、お母さんに会いたくなりました。
子どもが大人になったとき、もう一度読み聞かせたい歌です。
「直歩」…すてきなお名前です。

 

[529] 河村壽仁さん

密厳院終山大雄居士といふ亡きドイツ人の名前は誰です?

前半に漢字がびっしり並んでいて、思わず「?」と引きつけられました。
それが戒名だと気づいてから、下句を読み進めて再び「?」
彼(彼女)はドイツ人だった。
いつどうして日本にやってきたのか。
どうして死んだのか。なぜ日本の土になったのか。
日本人と結婚したのかもしれない。日本を愛していたのかもしれない。
などと、勝手に背景の物語を想像しました。
ただ、最後の「ドイツ人の名前は誰です?」が、やや文章がねじれているように思いました。
「ドイツ人は誰です?」か「ドイツ人の名前は何です?」ならわかるのですが。

<<                                      >>

001    011
002    012
003    013
004    014
005    015
006    016
007    017
008    018
009    019
010    020

021    031
022    032
023    033
024    034
025    035
026    036
027    037
028    038
029    039
030    040

041    051
042    052
043    053
044    054
045    055
046    056
047    057
048    058
049    059
050    060

061    071
062    072
063    073
064    074
065    075
066    076
067    077
068    078
069    079
070    080

081    091
082    092
083    093
084    094
085    095
086    096
087    097
088    098
089    099
090    100

back


© Umi Sato All Rights Reserved.