006:土

[8868]兵庫ユカさん

土曜日はマトリョーシカの二番目の娘になって待つだけだった

個人的に、マトリョーシカ人形が好きなのもあって、目に留まった一首。
「マトリョーシカの二番目」という比喩が面白い。
大きい方から数えて二番目なのか、それとも小さい方からなのかがわかりませんが、とにかく確実に「二番目」なのです。
土曜日に「待つだけ」しかできない状態とは?
深読みして、不倫の恋の歌かなとも思ったのですが、どうなのでしょう。
そう考えてみてみると、二番目の「娘」という表現にも違った意味合いを見ることができると思います。

 

[6285] 紅茶硝子さん

土踏まずあたりがじんとするキスとピンクのハブラシ用意しといて。

「土踏まずあたりがじんとするキス」にノックアウトされました。
穏やかであれ激しくであれ、キスの官能性をうまく表現した言葉だと思います。
体のいろいろな箇所が「じんとする」だろう中で、このお題が前提にあったとしても、土踏まずを選択したところが巧妙です。
そして、「ピンクのハブラシ」のキッチュさ。
若い女性のスピード感のある恋心を感じさせる一首となっています。

 

[2582]桐嶋清雅さん

花だけじゃなくて支柱や土にまで名前をつけるような人でした

とても可愛らしく、少し切なくなる一首ですね。
切なくなった理由は、「〜でした」と過去形であるため。
もう、その人は作中主体のもとから去ってしまったのでしょうか。
何にでも名前をつけるような優しい人。
「花」と「土」は連想されやすいのですが、その間に「支柱」が挟まれて置かれているのが個性的です。
具象と抽象の真ん中にあるような「支柱」という一語が、この一首に独特な雰囲気をもたらしていると思います。

 

[9773]五華さん

見掛けより傷つきやすい気持ちです これより先は土足厳禁!

うーん、なんて素直な歌。
私は相聞歌と受け取りました。
こういう気持ちは、面と向かっては気恥ずかしくって、なんか怖くて(だって傷つきやすいから)きっと言えないだろう本音。
結句「土足厳禁!」が全体を少しコミカルな雰囲気にしています。
土足じゃなかったら、静かに優しく入ってきてくれるのだったらいいだろうか。
自分の弱さや傷つきやすさを表明することは、恋愛においては、愛情表現のひとつなのかもしれませんね。

 

[1384]深森未青さん

土の像に女陰きざみて夜半ひとり自慰にふけりや縄文の民

カマトトぶっているわけでなく、大変衝撃を受けた歌。
「女陰」「自慰」でうろたえ、最後の句「縄文の民」を読んだときに、心の中で何かが激しく動いたのを感じました。
まさかこう来るとは!という驚きでしょうか。
はじめは、現代もしくは近代の彫刻家が創作をしている情景を思い浮かべていたのですが、結句に至り、 イメージは一気に、太古の彼方へと飛んでいきました。
それぞれの句に硬い文字(漢字)がはめ込まれていて、その硬さと詠まれている情報との距離感が面白いです。

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