007:数学

数学のお題では、詠み手の思いが強く出るようです。
分類してみると、


1)数学が嫌い・苦手であった学生時代の思い出から生まれた短歌
2)学生時代の数学教師を詠った短歌
3)数学者の生態(?)を詠った短歌
4)恋愛を数学の公式・方程式として表現した短歌(私はこのタイプ)
5)数学から美しさや正しさを汲み上げた短歌
6)その他


一番多かったのが、1)でした。
みなさん、文系だったのでしょうか。
数学に対する苦手意識を全面に押し出した短歌がよく見られました。
友達と愚痴を言い合った思い出、試験で苦労した思い出…
「数学」という言葉には、人の心を学生時代にタイプスリップさせる力があるようです。
また、算数から数学(小学校から中学校)へと変わっていく頃の不安感や戸惑いを詠った短歌もいくつかありました。
これらも、数学以外の教科では表すことができない心境ではないでしょうか。

 

[2912]ただ(夛田真一)さん

「好きな人ができました」という君の言葉は数学的にも垂直だつた

上記の分類でいうと、「5)数学から美しさや正しさを汲み上げた短歌」になると思います。
「数学的にも垂直だつた」というのは、「君の言葉」の持つ意味と響きと重さが、 作中主体に正しく伝わったことを示していると思いました。
恋していた「君」が、自分以外の誰かを好きになったという事実。
それは受け入れたくないけれど、「数学的にも」動かしようのない確かなことなのです。
音数に関して、もう少し考慮の余地があるように思いました。

 

[2212]斉藤そよさん

春休み「おひるね指数学会」のクマの講話を聴きに行こうよ

もうあんまり可愛いので引っ張ってきてしまった一首。
「おひるね指数学会」も「クマの講話」も、みんなみんな可愛い。
しかも季節は春。私も聴きに行きたい。
多分、聴きながら「おひるね」してしまうだろうけど。
講話に耳を傾けている人々(動物たちかもしれませんね)も、そして壇上で話をしているクマさんも、 会場にいる全員が、春の暖かな日差しの中で眠ってしまう。
ファンタジックで夢のある童話の世界が広がります。

 

[517] しんくわさん

数学の先生たちのギルドがある体育倉庫の地下の扉

「3)数学者の生態を詠った短歌」として取り上げたい一首。
絶対フィクションなのだけど、妙にリアルに情景が浮かんできます。
数学の先生だけが集まって、体育倉庫の地下で何やら議論している情景が。
「体育倉庫」であるけれど「保健体育」ではなく、数学の先生というのも不思議な説得力を感じます。
一首の中で、視点は最終的に「扉」へと絞られる。
それは、数学教師でないと開けることの決して許されない、禁断の扉なのです。

 

[5652]田中槐さん

数学者の美しき手にてほどかるるたったひとつの問いになりたし

上記の分類でいうと、「5)数学から美しさや正しさを汲み上げた短歌」になるでしょうか。
数学、もしくは数学者(この一首の場合は手)に美を見い出すのは、数学における真理が「たったひとつ」だからだと思います。
作中主体の思いはふたつ。
「たったひとつの問い」になること。
そして、解かれること。
数学者はその瞬間、問いのことだけを考え、見つめ、取り組む。
そう思うと、なんだかとても官能的な相聞歌のように感じてきます。

 

[4582]水須ゆき子さん

数学に憎しみはなく微積分こそ美なりとぞ禿の恩師は

上記の分類でいうと、「2)学生時代の数学教師を詠った短歌」と「5)数学から美しさや正しさを汲み上げた短歌」の両方にかかっています。
水須さんが、実際に「禿の」数学教師に教えてもらったかはわかりませんが、一首の中で確かな存在として彼はいます。
静かに学生たちに語りかける口調や、穏やかな笑顔を想像させます。
そして、「微積分こそ美なり」という言葉の美しさ。
私自身、微分積分の問題を解くことは人生の中でもう二度とないだろうし、学生時代に習った記憶もほとんど残っていません。
だからこそ、遠いものとなった微積分に、まるで空に輝く星のような美しさを覚えるのだと思います。
ただ、はじめの「数学に憎しみはなく」がするっと通り過ぎてしまう感覚があります。
主体は何か。
「禿の恩師」が、数学に対して憎しみを持っていないのか。
数学という学問自体が憎しみを持っていないのか。
そこが少しわかりにくかったです。

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