008:姫

[15087]キタダヒロヒコさん

びらびらに過去のはだけた姫抱けばやはらかくなるわれの薄皮

ここで「びらびらに」はだけているのが、姫の「過去」だけでなく、詠まれていない服に、 さらには「われの薄皮」にまでかかっているように感じられました。
「過去がはだけ」ているという状態は、服がはだけて素肌があらわになっているよりも、 より「素肌」になっている(心が)と言えるのではないでしょうか。
抱きしめている相手は、「われ」にとっての「姫」
柔らかくなった薄皮が、彼女の体と心を温かく包み込みますように。

 

[6677]田丸まひるさん

ゼンマイ式姫君のネジも回せない(ただのともだち)レプリカ王子

「ゼンマイ式姫君」と「レプリカ王子」が、まひるちゃんの管理する実際のサイト名だということを知らなくても、十分に魅力的な一首。
こうして短歌の中で見てみると、なんてセンスのあるサイト名なのだと改めて感じました。
四句目「(ただのともだち)」という(カッコ)+ひらがな表記は、意味においても、視覚的バランスにおいても、 この一首の世界観に最も適していると思います。

 

[798]河村壽仁さん

姫様はふうわり病に罹られた この空にのびる紐の先に

まるで上質な童話のように繰り広げられる「ふうわり病の姫君」の物語。
その物語の発端を描いているのがこの一首です。
「ふうわり病」という、イマジネーションあふれる設定が効いています。
その病名から、「姫君」の性格や容姿までもが想像できるような気がします。
性格も、着ているドレスも、笑顔もふうわりと柔らかなお姫様。
ぜひ挿絵入りで読みたい連作となっています。

 

[11581]大江ケンジさん

姫からの手紙はいつも瑠璃色の鳩が届けてかんたんに死ぬ

結句を読んで、唐突な物語のラストに驚かされました。
それまでは「姫」が主人公だったのに、最後は「瑠璃色の鳩」に焦点が当てられたという感じ。
文章も、主語がねじれています。
「(鳩は)かんたんに死ぬ」ですよね?
簡単に死ぬ…その言葉の意味のインパクトもすごいのですが、「かんたん」とひらがな表記なのが、 より簡単さを表しているようで、童話の持つ残酷さのようなものを感じました。

 

[6200]加藤苑三さん

姫さまになりそこなった「夕やけだ!」フリーズドライ苺のかさかさ

たたみかけるように連なる言葉のベクトルが、すべて「姫」の語に向いている一首。
何よりも、「フリーズドライ苺のかさかさ」にやられました。
まるで手の上に今、フリーズドライの苺を一粒乗せているような質感を感じます。
瑞々しさや甘酸っぱさの象徴でもある苺が、かさかさの深い赤の固形物となっている…何か不思議な感覚になります。
また、夕やけの太陽とかさかさに乾いた苺が鮮やかにオーバーラップされて、印象的です。
ただ、あえて狙ってつくったのかもしれませんが、一首を声に出して読んだときに、5・7/5/7・7と句がぶつぶつ切れているのが気になります。
初句と二句は三句目に繋げるような形の方が、叫ぶような「夕やけだ!」を生かすことができるのではないでしょうか。

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