009:圏外

このお題で一番多く連想されていたのは、やはり「携帯電話の圏外」でした。
私はできればそこを避けたかったので、なんとか「携帯電話の圏外」の圏外に逃れようとしました。
なので、マラソン会場でも、つい携帯電話以外の圏外を詠んだ短歌に目がとまりました。

 

[7552]phaさん

圏外で目を細めてる少年に触れたいそして触れてはいけない

圏外にいる少年は、きっと、自分自身とはまったく別の世界の象徴なのです。
その少年がまぶしいのか、「目を細めて」こちらを見つめている。
それは、まるで微笑んでいるかのように見えたかもしれません。
少し考えて、私は、彼は「過去」もしくは「未来」を表す存在なのではないかなと思いました。
だから、触れたくても触れてはいけないのだと。
「触れてはいけない」という禁止は、決して厳格な響きではなく、どこか冷静に優しく諭しているように聞こえるのです。

 

[6678]田丸まひるさん

振り切ってみたいくらいの春だから「ごめんね」なんて大気圏外

とても元気のいい、快活な歌だと思いました。
ここは、季節は春でないといけない。
「振り切ってみたいくらい」なのは、春以外は想定できないのです。
さて、「ごめんね」と言っているのは、作中主体か。
それとも作中主体が言われている立場なのか。
私は後者で取ってみました。
謝られるのは、ときにとても悲しい気持ちにさせます。
せっかくの春なのに。
ふいに吹く強い風が、散り始めた桜の花びらと一緒に、「ごめんね」の言葉も遠くに飛ばしていってくれることを願う春の日。

 

[2619]鈴木英子さん

ぬわぬわのわたしのからだにふってくる地球圏外植物の種

「ぬわぬわ」というのは、どういう状態を表す形容詞なのでしょう。
それ以降のすべての語句にかかっているようにも感じられました。
ぬわぬわした「わたしのからだ」、大気圏外からぬわぬわと「ふってくる」様子、ぬわぬわした形状の「地球圏外植物の種」…
「ぬわぬわ」こそ、常識ははるかに超えた世界の何か、を表現しているのではないでしょうか。
そして、「地球圏外植物の種」が体に付着し、ありとあらゆる細胞に完全に根付いてしまったときこそ、 「わたし」そのものが「ぬわぬわ」になるのです。
ああ、思考がホラーになってしまった。

 

[1317]春畑茜さん

アムロ、シャア、ララア、カミーユ…大気圏外に戦うものを思えば

[3197]内田誠さん

大気圏外から突入するザクと同じ程度の犬死になんて

ここでは、偶然「ガンダム」つながりになったふたつの短歌をご紹介。


[1317]
ガンダムの登場人物たちの名前が並び、彼らに思いを馳せる。
ガンダムを知らない人が見ると、それぞれの名前がまるで不思議な呪文のように聞こえるかもしれません。


[3197]
自分たちの信念を持ち、大気圏外で戦う人々。
そして倒されて死んでいく者に対して、「犬死」と言ってしまうのはなんだか悲しい気持ちになりました。
死を悼む気持ちの裏返しかもしれませんが、そのザクの中にシャアがララアが(意志を持ったひとりの人間が)乗っていたら…と考えると、どうしても可哀相に思ってしまいます。


どちらの歌も少し消化不良のように感じました。
ガンダムを用いるのであれば、その世界観にもっと踏み込んだ視点+ガンダムをまったく知らない人にとっても魅力的な、 一首の短歌として完結された作品を。

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