017:免許

[11491]ひぐらしひなつさん

運転免許試験場前バス停にバスを待ちつつさみどりの午後

言葉のリズム、詠われている情景、それぞれがとても心地よい一首。
「運転免許試験場前バス停」という指定の細かさは、詩的な非日常の世界を日常に引き止めてくれる役割というよりも、 日常と非日常との境界を逆に曖昧にしているように感じられます。
「さみどりの午後」にバス停に立つとき、その人の心もまた「さみどり色」になっているのでしょう。

 

[9317]村上きわみさん

ややこしい手順をふんで手に入れたドラゴン飼育係の免許

メルヘンチックな一首で、思わず「挿絵つきの童話として見てみたい」と思いました。
そうでしょう、「ドラゴン飼育係の免許」を取るには、さぞ「ややこしい手順」を踏まなくてはならないでしょう。
そんな面倒な作業をしてまでも、この童話の主人公は、ドラゴンの飼育係になりたかったのだ、と想像を膨らませました。
「ややこしい」の語感がなんだか優しいものに感じられるくらい。
連作でこのお話の続きをぜひ読んでみたいです。

 

[9113]なかはられいこさん

免許証の写真たがいに見せ合ってあくにんづらをかくにんしてる

柔らかなウィットに富んだ歌。
「悪人面を確認してる」の部分が、ひらがな表記になっていることの効果も大きいようです。
免許証(多分、運転免許証)の写真写りの悪さを見せ合う関係は、なかなかに親しいものである必要があります。
その親しさのこもった空間を巧みに表した、ひらがな表記なのです。

 

[6722]杉山理紀さん

ご免許してごめんそう言い逃れたら至国道二号線沿い

お題「免許」を「免許(証)」以外で詠んだ一首。
この作中主体は、今はきっとひとりでいるのだろうと思います。
「至国道二号線沿い」を、車を運転していたり、あるいは歩いたりしながら、きっとひとりきりで、 孤独感と一緒にいるように想像されます。
本当は「言い逃れ」てきてはだめだったのかもしれません。
背景の物語が、国道を走る車から見える風景のように、びゅんびゅんと後ろの遠ざかっていく感覚を覚えました。

 

[7995]竹田正史さん

月の夜に花に混じって降ったもの魔女の免許の持ち主は誰

すごく可愛らしいイマジネーションの世界。
童話の最初の1ページを読んでいるような気分になります。
「魔女」と言っても、悪魔との契約とか呪術とか、そういう禍々しい存在じゃなく、ジブリ映画『魔女の宅急便』の主人公のような、 初々しい少女の魔女を想像させます。
もし本当に「魔女の免許」というものがあったなら、多分、こうして月夜の空からヒラヒラ降ってくるんだろうなぁ。
ただ、「降ったもの」で一度、切れてしまっているのが少し引っかかりました。
「降ってきた」と連体形にして、「魔女の免許」につなげてもよかったように思いました。
もしくは、私が捉えた意味とは違うのかもしれません。

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