026:芝

[11401]村上きわみさん

よく濡れた芝生の上で僕たちは礼儀正しくぼうりょくをふるう

礼儀正しく暴力を振るう、という言葉のねじれが、読む者の目を引きつけます。
「よく濡れた芝生」は、朝露にでしょうか、それともスプリンクラーの水によってでしょうか。
キラキラと光の粒が散らばっている情景が目に浮かびます。
「ぼうりょくをふるう」とひらがな表記になっていることが、 実際に「暴力」という言葉が持つイメージを、逆に強調しているような感覚を受けます。

 

[9563]笹田かなえさん

これ以上かなしむことのないように芝生に落ちた影も切り取る

何よりも、上句「これ以上かなしむことのないように」という言葉の優しさに惹かれました。
まるでおまじないのように心に響きます。
下句の、影を切る取るという表現は読解するのは難しいのですが、多分、その影はくっきりと濃いのだろうと想像します。
「芝生」私は、この単語自体から、夏の日差し、 それもちょうど頭の真上で照りつける太陽を思い浮かべるのです。

 

[7400]杉山理紀さん

東芝日曜劇場みて眠る削ったばかりのえんぴつみたいに

「東芝日曜劇場」から受けるイメージは一体、どういうものなのか。
漢字6文字がきちきちと並ぶことによる視覚的要素を見て取ることができると思います。
「削ったばかりのえんぴつ」のように眠る、という比喩が素晴らしい。
そこに私は、健やかさを感じます。
鉛筆のような形状(真っ直ぐな姿勢で)をたとえたのではなく、もっと内面的なものを表現しているのではないでしょうか。
削られることによってまったく新しい顔を見せる鉛筆。
細かな削りカス。木と芯の匂い。その、健やかさ。

 

[7253]みうらしんじさん

雨の夜、芝生の上に寝ころんで見えない星をかぞえつづけた

青春歌。
雨降りの夜に、(公園の?)芝生の上に寝転ぶなんて、心の「青春状態」じゃないとできないことです。
作中主体に一体、何があったのでしょうか。
こうような行動をしなくてはならない、彼にとっては決定的な出来事。
「見えない星」というのは物理的に、雨雲の空だから見えない、のではなく、心の中でしか見えない星という意味なのかもしれない。
そうしたら、彼は雨粒がどんどん落ちてくる中、目をつむりじっと、その星々を数えていたのかな、と思いました。

 

[6894]こはくさん

その芝に寝そべるのなら宣誓を「地球の鱗になります私

「地球の鱗」という表現が面白い。
地球を魚に喩えているのでしょうか。
生命のはじまり、海の青さ、芝の青さ、光を反射させる鱗のキラキラ…
それぞれのモチーフのイメージが次々に連想されます。
「その芝」はどの芝なのか。「宣誓を」誰にするのか。
すべてを語らないことによって、詩的な世界観が広がります。

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