028:着

[22857]良子さん

さあ、ヨハン。着地のときの足どりはみてあげるから、出かけておいで。

私はもう確実に、マンガ『MONSTER』(浦沢直樹著)を思い浮かべたのですが、どうでしょう、 あのヨハン・リーベルトのことなのでしょうか。
「彼」だと想定すると、この一首の魅力が、原作マンガの世界を背にどんどん迫ってきます。
優しく説くような口調に、恐ろしささえ見い出すことができます。
作中主体は一体、誰なのか。
どの視点から、何歳の頃のヨハンに向かって言っている言葉なのか。
思わず、マンガを読み返したくなる一首です。

 

[13362]石川美南さん

到着の知らせはまだか街中が今宵ジルバのステップで待つ

私はこの一首を、恋愛の歌だと思いました。
恋人が、作中主体のいる街に「到着」する夜のこと。
自分だけでなく、街中が誰か(何か)の到着を待っているのだ、という想像は、恋愛の力そのものなのではないでしょうか。
ジルバは、アップテンポで軽快なダンスです。
作中主体の高揚した気持ちが伝わってくるようです。

 

[9994]岡村知昭さん

決着の予定時間を過ぎてなおグラジオラスの前を動かず

グラジオラスとは、唐菖蒲のこと。
花の色は、白・赤・薄紅・黄・紫など。
夏6月の季語となっています。
「グラジオラス」の語句の意味がわからなくても、それが何か重要なモチーフとなっていることが伝わってきます。
例えば、「動かず」が「動けず」であった場合、一首全体の意味合いは大きく変わってきたと思います。
私は、「動かず」の主語を作中主体だと捉えました。
何の「決着」なのかは計り知ることはできませんが、 作中主体はこの花の前を動かないままでいることを、決意しているのです。

 

[12649]ほそかわゆーすけさん

君と二人、着いた所は水色と白で塗られた初夏の空

鮮やかな情景が目の前に広がってきます。
「水色と白」は確かに、初夏に吹く風や光のまぶしさを感じさせる色だと思います。
「君と二人、着いた所」が、そのような爽やかな色彩のあるところであるならば、 この「二人」はきっと満たされた思いで、そこに立っているのでしょう。
切り取られた空の美しさ。
初夏の後にやってくる激しい夏を、その後の秋や冬を、「二人」はどのように迎えるのでしょうか。

 

[5548]門哉彗遥さん

逢えたから僕の心に付着した水滴が今ハレツしました

恋愛の歌でしょうか。
好きな人にふいに出くわしたときの驚きと嬉しさと気恥ずかしさを、水滴が破裂する様子に喩えていると読みました。
ハレツとカタカナで表記しているのも、パンッ!という破裂音を感じさせると思います。
ただ、時間軸がややわかりにくいように感じました。
逢えたからハレツした、ということは、心に水滴が付着したのはその前ということですよね?では、いつ?
人はつねに心に水滴をいく粒か付着させて生きているのでしょうか。
それはそれでロマンチックな世界設定。
あと、「逢えたから」というのが、少し説明的すぎるような気がしました。

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