031:肌

[16577]佐藤りえさん

肌色の絵の具を探す店員の血走った目をごらん、蜜蜂

最後の「蜜蜂」の存在が、この歌を不思議な世界のものにしています。
「肌色の絵の具」と、確かに不確かで曖昧で、物議を醸し出す色です。
しかしそれを、目を血走るほどに探す店員の奇妙さ。
作中主体は「蜜蜂」に向かって、その店員の様子を「ごらん」と言っているのです。
ここで言う「蜜蜂」とは、何を(誰を?)示しているのでしょうか。
私は、蜜蜂の飛ぶ翅の音、あの毒々しい黄色と黒色、そして針を思い浮かべ、 何か不穏な空気を感じたのです。

 

[12932] 紅茶硝子さん

    「肌色の魔法」なんだよ、せっくすは。だからふしぎできもちがいいでしょ。

「現代っ子のセックス観」(そういうものは実際に、総論として表すことができないのかもしれないけれど)を思わせる一首。
「肌色の魔法」という言葉の持つ、ファンタジックで官能的な響き。
下句の「だからふしぎできもちがいい」も、そう、魔法だもんなぁと妙に納得させられます。
うん、みんな魔法使いなのだ。

 

[9637]水須ゆき子さん

庭先のらっぱすいせん風にゆれ 金魚の肌が溶けてゆく音

ラッパ水仙が風に揺れる音、金魚鉢の中で金魚が泳ぐ音。
それらは聞き取ろうと思っても、現実には聞き取れないほどの小さなかすかな音でしょう。
作中主体の心の中で生まれる、季節の音なのかもしれません。
「金魚の肌が溶けてゆく」という表現が巧みです。
水の質感、金魚の鮮やかな黄金色、水中で反射する光を想像します。
ただ、一文字空けにもっと必然性を感じられたらと思いました。

 

[5381]桂木未輝さん

背もたれにあなたの肌を張り替えて世界でいちばん美しい椅子

江戸川乱歩の『人間椅子』を思わせる一首ですね。
狂気をはらんだ愛の歌だと捉えました。
上質の皮の椅子、その背もたれの部分の皮を剥ぎ取り、「あなたの肌」を張る。
「張り替える」という言葉の生々しさを感じました。
その椅子を「世界でいちばん美しい」と心酔する様子が、まさに江戸川乱歩の世界だと思います。

 

[7631]遊木さん

肌肌肌肌肌肌肌肌肌肌肌肌ああ気持ち悪い

このような言葉の繰り返しは、聴覚と視覚の両方に訴えかける作用があると思うが、 この一首のように漢字を用いた場合は、特に視覚への影響が強くなるようです。
実際に肌と肌が触れ合い、密着している様子がイメージされます。
結句の「ああ気持ち悪い」がもし「ああ気持ちいい」であったら、 恋人同士のじゃれ合いや、もしくはフェティシズムを詠んだ歌として捉えることができるかもしれない。
と思ったのですが、この居並ぶ「肌」たちは他人同士の肌(例えば夏の満員電車の中とか)だとすれば…確かに気持ち悪いですね。

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