034:ゴンドラ

[23520]林ゆみさん

ポケットを押さえて唱えるまじないは「ドラゴンドラゴン鱗が二枚」

このおまじないは、作中主体だけの秘密の言葉なのでしょう。
緊張する場面や、追い詰められた場面で。
もしくは、空が青い日などにふと思い出すような、「幸せ」を願うおまじないとして。
ポケットの中には、実際に「鱗が二枚」入っていると想像しながら唱えているのかもしれません。
その鱗を直接触るのではなく、そっと「ポケットを押さえ」る仕草に、思いがけず、 作中主体のささやかで真摯な眼差しを見た思いがします。

 

[22597]浦奈保美さん

ゴンドラを待つ静けさに似た朝はいつもより多く死人がでました

結句にドラスティックな展開を見せた一首。
本当に、この日の「朝はいつもより多く死人」が出たのかどうかはわかりませんが、短歌には、 たとえそれが作者の妄想であっても、真実だと信じさせてしまうような力があると思います。
「ゴンドラ」から連想される水の質感と、人の死とのイメージが、 心の中で結合していく感覚を覚えました。

 

[18992]魚柳志野さん

欲しいものはたいしてなかったあかときに焼却炉で燃えるゴンドラ

暁の赤と焼却炉の炎の赤が、強烈に視覚に訴えてきます。
「欲しいものはたいしてなかった」と言い切るとき、人はどのような面持ちでそこに立っているのでしょうか。
焼却炉の中で崩れていくゴンドラは、作中主体が「欲しいもの」ではないと棄却していった様々なものの象徴。
焼却炉の近くには、作中主体以外、誰も近づくことはできないのです。

 

[13124]紅茶さん

ゴンドラにマーブルチョコを撒き散らす。「冴島翠みたいになりたい」

ああ、私も「なりたい」と思っていたなぁ。
「冴島翠」は、女子中高生に圧倒的人気を誇る、矢沢あいのマンガ『天使なんかじゃない』の主人公のこと。
遊園地の観覧車のゴンドラの中で、彼女は恋する男とキスをする。
そのときゴンドラに散らばっている、カラフルなマーブルチョコ…
私はこのマンガを連載時からリアルタイムで読んでいて、そのからはマーブルチョコを見たら、 すぐにこのシーンを思い出すようになりました。
多分、同じような読者はたくさんいるのではないでしょうか。
この一首はカタカナと漢字のバランスがよく、とくに「冴島翠」というマンガの登場人物らしい名前、漢字の並びが引き立っています。

 

[9037]近藤かすみさん

観覧車のひとつひとつのゴンドラに十数分のドラマが廻る

この一首を読んだだけで、心はもう観覧車のゴンドラに乗っている。
読み手に夢を見させてくれる力を持った歌は素敵だ。
結句の「廻る」が観覧車とドラマの両方にかかっている点も鮮やか。
はじめ、「十数分」じゃなくて、具体的に何分と言ってしまった方がリアリティは出るのかなと思いましたが、 逆に曖昧にすることによって、より「夢心地」感を表現することができるのかもしれません。
実際に観覧車に乗っているとき、誰も時計なんて気にしないはず。

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