039:モザイク

[22742]兵庫ユカさん

手の粉を服で拭った存在が光のようなモザイク作家

作業の際に手についた、色とりどりの細かいガラスの粉を服で拭う。
モザイク作家のそんな姿を描いた一首だと捉えました。
窓から射し込む光が、服に付着したガラスの粉に反射して、モザイク作家の体が美しくきらめいているように見えたのでしょう。
まるで内面から輝いているように。
「存在が光のような」…モザイク作家の清廉な心を思わせる比喩です。

 

[20322]加藤苑三さん

    悲しんでいいのだ(たぶん)モザイクがかかっていないところがもうない。

どこに「モザイクがかかって」いるのか、情景はよくわからないのですが、悲しみが心を、 作中主体の生活を覆いつくしている緊迫感のようなものを感じました。
初句「悲しんでいいのだ」という自分自身への許しの言葉に、胸を締めつけられます。
表記でいうと、私は(カッコ)をほとんど使ったことがないのですが、 ここでは「心の中のもう一人の自分の声」という役割を持っているのだと思います。

 

[15263]ひぐらしひなつさん

この雨が聞こえませんかいくたびも描きなおした青いモザイク

作中主体が「いくたびも描きなおした」と言う「青いモザイク」は、雨の情景を描いたものなのでしょうか。
モザイクとあるだけに、一色の青色ではなく、微妙にニュアンスの違う様々な色合いの青で作られているのだと思います。
納得のいくまで何度も描き直したのは、作中主体自身、そこから雨の音を感じたかったから。
過去の雨の日の記憶を刻んでおきたかったのかもしれません。
そしてそれを、他者と共有したいという気持ちが、第一句・二句の質問形に表れていると思います。

 

[14700]田丸まひるさん

虹色のモザイクタイル踏みつけるわたしはいてもいなくてもいい

「虹」に付随するイメージは、希望や夢など明るい未来そのもの。
そんな「虹色のモザイクタイル」を、作中主体は憎々しい気持ちで踏みつけている。
「わたしはいてもいなくてもいい」という言葉は自虐的で、強い孤独感を表しています。
歌のはじまりで感じた明るさが、下句にいたるまでに180度転換し、読み手の感じ方にひねりを与えています。

 

[5583]桐嶋清雅さん

確実なものなんてほんの一握り モザイク越しに夕陽は赤い

下句が魅力的。
モザイク模様の窓ガラス越しに「夕陽」を見ている情景を思い浮かべました。
ここで言う「モザイク」は、不確かなものの集合体を象徴しているのでしょうか。
そして、夕陽は確実なものの象徴。
「夕陽は赤い」という言い切りが、妙に切なさを伝えてきます。
ただ、上句がもう一捻りあってもいいかなと思います。
「ほんの一握り」の部分で、リズムが滞ってしまう気がしました。

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