043:濃

[18524]なかはられいこさん

うんと濃いお茶を淹れましょ黄昏の空にまぎれてしまわないよう

黄昏時の空とお茶の色のイメージとが重なり合います。
心の中に、澄んだ黄土色や黄緑色が広がっていくようです。
私の場合は、自分の体に清いものを取り込みたいとき、「うんと濃いお茶」を飲みたくなります。
作中主体は、「黄昏の空にまぎれて」しまいそうな自分の心を、現実に引き止めておくために飲もうとしているのでしょうか。
誰か親しい人に向かって、「お茶を淹れましょ」と誘っているようにも感じられました。

 

[15581]岡村知昭さん

ひとしきり円周率をそらんじて濃尾平野の晴れわたるなり

上句と下句の展開が面白く、それが一首の魅力になっています。
「円周率」と「濃尾平野」という、一見繋がらないような語句の選択に、 詠み手の意図を探り出そうと目を凝らしても、一首全体に流れる軽快さによってうまくそらされてしまう感じがしました。
晴れわたる濃尾平野に、円周率をそらんじる声がくるくると巡っていくような感覚を覚えました。

 

[15359]村上きわみさん

夏雲の濃淡を塗り分けている少女よそれはかみさまの舌

結句まで読んで、思わず「なんて可愛い!」と手を叩きたくなりました。
「夏雲」の中のある一部分は「かみさまの舌」である、という視点がなんだかとても可愛らしく感じられました。
畏怖に近い気持ちなのかもしれません。
雲の濃淡の存在に気づいて、それを紙に写している少女。
その少女へ「かみさまの舌」の存在を教える作中主体。
現実感の薄い不思議な情景の中、ふたりともが「かみさま」に近い存在のように感じたのです。

 

[15114]田丸まひるさん

泣かせるか泣かされるかってだけでしょう濃縮還元オレンジジュース

作中主体の今の気持ちを表すものとして、「濃縮還元オレンジジュース」以上のものはないのでしょう。
今まさに、目の前の相手と「泣かせるか泣かされるか」という切迫した状況にいるのだと思います。
「濃縮還元オレンジジュース」のそのありったけの濃さ、喉を通るときの感覚を思い浮かべることにより、 読み手は作中主体の心情にシンクロしていきます。
この物語の結末が気になります。

 

[7884]五十嵐きよみさん

(4)褪せてゆく文字
うたた寝のあとにも夏がつづく午後カルピスはもう濃くなくていい

カルピスがある夏の午後っていいですよね。
氷の入ったグラスが汗をかいて、ときおりカランッと音を立てている。
その横で、作中主体はうたた寝をしている。
目覚めたときには、もう氷は大分溶けていて、カルピスは薄くなっていたのでしょうか。
「もう濃くなくていい」という言い方が、うたた寝から覚めたときのけだるさを感じさせます。
本来は、濃くないカルピスは許されない存在、なのかもしれません。

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