045:家元

[24492]星川郁乃さん

家元の美しすぎる手さばきを見ているうちに冷えていく部屋

[15730]ひぐらしひなつさん

鈍色のひかりを放ち家元の鋏しずかに椿をさらう

[15361]村上きわみさん

家元のうつくしすぎる背景に白い芙蓉はややぼんやりと

いずれも、家元の持つ「美しさ」を詠んだ歌になっています。
私自身、このお題では、
>永遠に年を取らない家元は静かに歩き美しく泣く
という歌を詠みました。
「家元」という語そのものが、美のイメージを内包しているのでしょうか。
美しいものは、ときとして冷たさを感じさせるのかもしれません。
こうして三首を並べて見たとき、[24492]の「美しすぎる手さばき」とは、 [15730]の鋏を持つ家元のものではないかと、リンクさせて想像しました。
「鈍色のひかりを放」つ鋏の感触と、「冷えていく部屋」が響き合い、ひとつの世界として鑑賞することができると思います。
また、[15730]では椿が、[15361]では芙蓉が提示されています。
前者では強い赤色を、後者では「ややぼんやりとした」白色を、それぞれの歌のイメージカラーとして思い浮かべました。
「家元」というお題は、物語性の高い歌をつくらせる魅力があると思いました。

 

[22353]青山みのりさん

青山家元気でいますこの街は濁音ばかり流れています

お題「家元」を「家元」以外の語句として詠み込んだ一首。
前半は明るい調子で始まり、「青山家」の皆さんの笑顔や朗らかな声、食卓での会話のシーンなどを想像させます。
しかし、後半の「濁音」という言葉によって、一首の雰囲気ががらりと変わりました。
騒音ではなく、濁音。
家庭の内と外との隔たりの大きさが明確に示されています。
そして、幸せな家庭と見えていた場所が、何か世界とは異質のものではないか、という違和感が感じられてくるのです。

 

[8316]杉山理紀さん

家元のたもとにひそむピストルが暴発をして粉々の絹

家元と言ったら、やはり着物姿が思い浮かびます。
その家元からピストルへのイメージの飛躍(茶道や華道といった有機的なものと、銃器・金属の無機質さ)が面白い一首。
結句「粉々の絹」が美しい。
私は、着物の生地が絹なのかな?と想像しました。
粉々になって舞い散る絹の破片は、すなわち、家元の死を表しているのでしょうか。
たもとにピストルを潜ませていなくてはいけなかった家元…背後に様々な物語を感じさせます。

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