049:潮騒

[23329]岡村知昭さん

潮騒を聞くこともなくなにもなくガソリンスタンドに座り込む

「〜もなく」が二度繰り返されることによって、作中主体の疲弊した気持ちや諦めのような感情が伝わってきます。
夜の海沿いのガソリンスタンドを想像しました。
人工的な明かりの冷徹さを感じてしまう夜なのでしょう。
孤独感を強く感じさせる一首です。

 

[21931]なかはられいこさん

潮騒や砂がこぼれてしまうからボタン首まできちんと留める

自分の体内から「潮騒や砂」があふれてくるのだとすると、なんとも不思議な歌です。
「潮騒や砂」というのは、海での思い出や記憶の象徴でしょうか。
それらが「こぼれてしまう」ことのないように、ボタンを「首まできちんと留める」という。
そのある種の思い込みの強さが、そのまま、この一首の魅力の強さになっているのだと思います。

 

[15461]田丸まひるさん

両耳をふさぐあなたが聞いている潮騒 そっと額をなめる

「そっと額をなめる」というインパクトのある表現に心惹かれました。
「あなた」は作中主体の恋人なのか、それとも幼い子かもしれません。
額を舐める行為は、「あなた」の不安や怖れを取り除くためではなく、作中主体の好奇心から来るもののように思いました。
「あなた」の額がそこにあり、ふと舐めて確かめたくなる。
それは確かに愛情の証なのです。
しかし、両耳をふさいでいるのに、潮騒を「聞いている」という表現の意味がわかりかねました。

 

[11755]水須ゆき子さん

潮騒を耳に隠して乗り込めば特急電車は穏やかな箱

ここでの「潮騒」は、本当の意味での潮騒ではなく、電車のモーター音やレールとの摩擦音、 また乗客たちの話し声や駅構内のアナウンス音…その空間に満ちるすべての雑音を表しているのだと思いました。
下句に表現された、詠み手の感性の豊かさ。
「穏やかな箱」となった特急電車は、作中主体とその他多くの人を乗せて、目的地まで真っ直ぐに滑っていく。
こうした「真っ直ぐさ」というのは、他の交通手段では感じられないような気がします。
また「箱」から、私はノアの箱舟を連想しました。

 

[6993]桐嶋清雅さん

あの街を思い出す度潮騒があたしの胸を満たし始める

海のある街だったのしょう。
「あの街」での出会い、たくさんの思い出。
それらは潮騒の響きと匂いとともに、胸へと押し寄せてくるのです。
悲しい思い出なのかと思いましたが、結句「満たし始める」という表現に、それが温かく幸せな思い出であることを望みます。

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