050:おんな

[21932]なかはられいこさん

小説のおんなのせりふはらはらと落ち葉している午後であります

「はらはら」が、落ち葉の落ちる音にも、台詞が伝わる様子にもかかっているように感じられます。
落ち葉と同じ速度で、小説から台詞がこぼれてくる。
もしかしたら、「小説のおんな」が「はらはらと」泣いているのかもしれません。
第四句「落ち葉している」というねじれた表現が、結句「午後であります」という話し言葉のニュアンスと巧く合っていると思います。

 

[20903]加藤苑三さん

おんなとして。おんなとして。って、鉄棒はずっと苦手だったんだよ。

作中主体の気持ちが、自分ととても近いところにあるのではないかと、強く心引かれた一首。
「おんなとして。おんなとして。」と周囲の人に言われ続けて生きることは、 鉄棒の逆上がりができなくて放課後ひとり残されている気持ちなのかもしれない。
これは女性でも男性でも、きっと同じですね。
固く冷たい、沈んだ色をした鉄棒。
鉄棒をずっと握っていたときに両手につく、鉄の匂いを思い出させます。

 

[10497]こはくさん

わたくしのおんなをひきだそうとして てあたりしだいにさぐる番号

「わたくし」の女性性は、金庫や駅前のロッカーに保管されているようなものなのでしょうか。
不思議な味わいのある一首です。
自分でも暗証番号がわからずに「てあたりしだいにさぐる」状況は、一首の言葉の軽重よりも切実に感じられます。
上句と下句の間の一字空けは、意味合いからの必然性というよりは、 ひらがなの「て」が重なることによる読解のつまずきを避ける目的のように思われます。

 

[10726]牧野芝草さん

おんなでもおとこでもなくこうもりやむささびみたいに生きているぼく

はじめ、「こうもり」や「むささび」ってどんなイメージで出てきたんだろう、なんか可愛いなという印象を受けました。
こうもり・むささびの共通点は、夜行性であること、そして空を滑空すること。
そのことを踏まえて、もう一度読んでみると、また印象が違ってきます。
「ぼく」は、「おんなでもおとこでも」ないという。
トランスセクシャル?トランスジェンダー?
空を飛べるけれども、鳥類ではなく、昼間は物陰にひそむ夜行性。
ひらがな表記の柔らかさの中に、強い主張が込められているように感じられます。

 

[9918]遊木さん

冬の朝白い光のその中をまいなすいおんななめにすすめ

今回のお題は「おんな」と、ひらがな表記であることを上手に組み入れた一首。
下句を変換すれば、「マイナスイオン斜めに進め」
途端に、原案の持つ不思議な魅力がなくなるように感じます。
ひらがなだらけの表記が、冬の朝や降りそそぐ白い光、そして満ちるマイナスイオンまでをも閉じ込めているようです。
「まいなす」の中の「な」と「す」が繰り返されて、結句の「ななめにすすめ」へ繋がっていきます。
視覚的な表現の面白さと、斜めに進むという奇妙な行為とが相まって、実に不思議な朝の空間が生まれています。

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