061:高台

[18934]石川美南さん

高台に金木犀の花散らばり今日はゴドーを待つことにする

『ゴドーをまちながら』、調べました。
>1953年に初演された、ベケットの戯曲。現代劇を革新した不条理劇の代表的作品。
とありました。
戯曲のタイトルを持ってくるところがウィットに富んでいて、読者を楽しませてくれます。
不勉強でどんな内容の戯曲なのか知らないのですが、 ゴドーの人物像を、その名前の響きと「金木犀の花」のイメージとの交差から想像させます。
ただ、三句目の字余りはリズムが引っかかるように思いました。

 

[12127]萩原留衣さん

高台の売り地にこっそり宝箱埋める計画するからおいで

分譲住宅の建築が予定されている、今はまだ野原のままの高台。
真夜中おうちを抜け出して、そこへ思い出の宝箱をみんなで埋めようという。
それは、「今はちゃんと大人になっている、かつての少年少女たち」の計画なのだと思います。
最後の「おいで」という言葉を目にしたとき、読者は少なからずうれしさを覚えるのではないでしょうか。
この秘密を共有しているような感覚になります。
ひそやかな、でもキラキラとした秘密の計画。
穴はできるだけ、深く深く掘りましょう。

 

[16080]ほそかわゆーすけさん

「夢」ってのはそれは例えば高台で菓子パン食うときちょっと膨らむ

ほそかわさんの投稿歌の中で、もっとも好きな短歌のひとつ。
とてもおもしろい世界観だと思います。
私は「菓子パン」を、勝手にジャムパンに変換して読んでいました。
「夢」と「高台」と「菓子パン」のイメージの繋がりが、不思議な魅力を持っています。
そして、夢が膨らむという表現の明るさ。
しかも「ちょっと膨らむ」
その妙な控えめさがまた、一首に独特のユーモアを与えています。

 

[14603]しんくわさん

高台の溜池の脇の草むらの中の美しい警官の死

これはもう、完成された一首という感じがします。
「高台」→「溜池」→「脇の草むら」→その中に放置された「警官」の死体、といったように俯瞰撮影された映像が、 ぐんぐんとクローズアップされてゆく過程が緊迫感を持って迫ってきます。
その場の匂いや、草むらを飛ぶ虫の羽音のようなものまでも感じるほどです。
視点は一点(「警官の死」)に集中していくのですが、その世界観は、物語の背景までも想像させる、 広がりを持った一首になっています。

 

[14221]橘真知子さん

高台のなき地に越してひと駅を電車に乗らず歩きてゐたり

事実を淡々と言葉にしたような一首。
結句までよどみなく紡がれていて、この飾らなさが逆に、作中主体の心境を浮き上がらせているように思います。
新しい街に引っ越してきてまだ間もない頃の感覚…
地域そのものの雰囲気に溶け込むまでの違和感や、歩きながら見える街路樹や近所の風景や、そのとき肌に感じる風を想像しました。
「高台のなき地」とありながら、知らぬ間に高台(きっとその前に住んでいたであろう)の存在を感じさせます。

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