062:胸元

[10853]我妻俊樹さん

はだけたらそこから鳩が飛びそうな胸元に陽のあたる寂しさ

修辞が効いていますね。
それまでは明るくにぎやかな(マジシャンのシルクハットから白い鳩が飛び出たのを目撃したような) 印象で読んでいたのが、最後「寂しさ」に帰着するとは。
暖かな陽が当たることが「寂しさ」になる。
それはアイロニカルでとても切ないことなのだと思います。

 

[16108]田丸まひるさん

胸元をさらしあってる夕暮れの第一校舎女子更衣室

耽美で親密性の高い空間を感じさせます。
「胸元をさらしあってる」という表現の仕方がいい。
「さらす」という言葉が、危うい羞恥心と密やかさを思わせます。
女子学生たちのささやき声や笑い声が聞こえてくるようです。
「夕暮れ」であることも最適な時間設定だと思います。

 

[14370]芳井奏さん

錆切れた銃胸元に突きつけてやさしさなんていらないと言う

ドラマのワンシーンのような情景。
映画『テルマ&ルイーズ』を思い起こしました。
「錆切れた銃」はもう撃つことはできないということ?
優しさなんて要らない、と言ったのは、相手の胸元に銃を突きつけている作中主体。
私には要らないから撃つよ、と。
相手は優しすぎる人だったのです。

 

[13478]飛永京さん

胸元をゆるく着崩し芸子らは氷苺でくちびる染めて

「氷苺」が決め手。
芸子さんとくちびると氷と苺…
すべてのイメージが繋がって、京都の暑い夏を想像します。
見えない、芸子さんの着物の柄にまで、「氷苺」のイメージが拡がってきます。
「暑い、暑い」と言い合いながら氷苺を食べている、芸子さんたちの明るい話し声が聞こえてくるようです。

 

[11769]杉山理紀さん

胸元に埋め込む涙 しあわせを混ぜ返してもしあわせがある

とても前向きな気持ちにさせてくれる一首。
たとえ胸元まで深く埋まっていくほど泣いても、心がぐらぐらになっても、結局、手元には幸せが確かに存在している。
そうそっと背中を撫でてもらうような、そんな言葉を誰でも待っているのかもしれません。

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