068:傘

[26109]良子さん

ほのぐらい低学年用玄関で切花めいてる傘立てのかさ

映像が鮮明に浮かんでくる一首。
「切花めいてる」という傘の比喩に、はっとさせられました。
雨の日の学校は、どうしてあんなにほの暗いのでしょうね。
登校したときもそうだし(子どもながらに、朝から陰鬱な気持ちになってしまった)、お昼休みの後も静かで暗いし。
この歌は、そんな思い出を色鮮やかに変換してくれました。
そして、「低学年用」という設定が効いています。
色とりどりの小さな傘が水滴に濡れて傘立てに並んでいる様子は、確かにお花屋さんの店先のようですね。

 

[19334]佐原みつるさん

完璧なかたちの蝶を探してて目の前にある深紅の日傘

「完璧なかたちの蝶」としての傘(日傘)、という提示が美しい。
蝶と傘との見た目の類似点は実際、少ないのかもしれませんが、完璧な蝶を頭上に浮かべて歩く人の姿を想像すると、 それはまるで夏の日の蜃気楼のようです。
「目の前にある」という言葉によって、読み手の目の前にも突然、すっと日傘が差し出されたような印象を受けます。
結句「深紅の日傘」が決まりすぎているような気もしますが(「深紅」の蝶がイメージしにいくのではないか、とも思ったり)、 作者の頭の中では、この日傘は深紅ではなくてはならなかったのだとも思います。

 

[15465]長瀬大さん

落下傘部隊 落下傘部隊 落下傘部隊 落下傘部隊

うーん、これは「短歌」ではないのではないかなぁ。でも、インパクトはすごいよなぁ。 と、目を離せなくなった歌です。
「短歌」の定義について、私自身は確固たる意見を持っているわけではないのですが、 同名詞の繰り返しのみ、というのはやはり短歌とは呼べないと思います。
だから悪いとかいいとかそういう議論をしたいのではなく、こういう作品もあるのだということを より多くの方と共有したいと思い、この歌を選びました。
視覚的効果としては、「落下傘部隊」が次々と降下してくる様子をイメージさせます。
意図的に単調な音のリズムは、軍事行為に対する抗議だと受け取ることもできると思います。

 

[8708]伊織♪さん

縞縞の傘クルクルと舞わしたら僕の首にはしゅるしゅる棘

「縞縞」、「クルクル」、「しゅるしゅる」といった音の繰り返しが一首のリズム感を生み出しています。
傘のストライプ模様が柄を回されることによって徐々に解けていき、 少年(「僕」)の細い首に絡みついていく情景は、耽美的で退廃的なイメージまで喚起します。
第三句目、「回したら」ではなく「舞わしたら」を用いたことで、「縞縞」そのものに生命感が与えられているようです。
最後「棘」は、音数から考えて「いばら」と読ませているのだと思いますが、ここは「縞縞の」の「の」や、 「クルクルと」の「と」に合わせて、「しゅるしゅると棘(しゅるしゅる/と/とげ)」と、棘の前に「と」を置いたほうが、 リズムがよくなると思いました。

 

[14208]新田瑛さん

青い傘が見つからないの、だからその、だからあなたに会いに行けない

舌足らずな印象を受ける口語体が、奇妙な主張(青い傘でないとあなたに会いに行けない、という)によく合っています。
台詞そのままのリズムを感じさせます。
「、だからその、」の部分には、戸惑いではなく、思い込みの強さが現れていると思いました。
青い傘で会いに行く様子は、なんだかとても純粋な子どものようです。

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