069:奴隷

[23031]紅茶硝子さん

    「のび太くん、みんな奴隷になるんだよ。ボクがその気になりさえすれば。」

確かに。確かにそうだよな、と共感した一首です。
いつもはどこか抜けている、未来のネコ型ロボット・ドラえもんの台詞。
子どもたちの人気者である、そのドラえもんが言うからこそ、「奴隷」という単語により強いインパクトを受けるのです。
のび太に対して語っている、というのもいいですね。
ふたりの関係性を考えながら読むと、いろいろな解釈のしかたができそうです。
実際、『もしもボックス』ひとつあれば、世界はきっと君のもの。

 

[22529]氏橋奈津子さん

ざいにんはよにもむざんにしになさい奴隷王朝のモスクのくもり

「罪人は世にも無惨に死になさい」
漢字で書くと、こんなにも非情な宣告なのに、ひらがなで表記されることによって、 うっかりするとその毒に気づかずに読んでしまいます。
一読後、言葉の意味合いを思ったとき、逆に残酷さがより強く感じられるように思います。
それが、作者の狙いなのでしょう。
「王朝」や「モスク」の提示から耽美さが漂ってきて、全体の世界観を生み出しています。

 

[20384]村上きわみさん

ねむれない夜にそなえて奴隷しか登場しない本をえらんだ

「奴隷」との距離感が、うまく言えないですけど、他の投稿歌とはどこか異なっている印象を受けました。
眠れない夜は、「奴隷しか登場しない本」を読めば寝つきがよくなる、と作中主体は言っています。
つまり、すぐに眠気を誘われるような退屈な内容ということでしょうか。
一体、どのような物語なのか。
作中主体は、その本を読んで何を思うのか。
真実は、「ねむれない夜」でないとわからないのかもしれません。

 

[11993]杉山理紀さん

かしずいた奴隷の視線おだやかに夏の手配がゆきわたってゆく

一読後、なぜ彼(彼女)は奴隷であるのに視線を穏やかにできるのだろう、という疑問がまず浮かびました。
この舞台にいるすべての人々の中で、奴隷であるこの人物だけが「おだやか」な精神状態でいるような気がします。
初句「かしずいた」の一語により、読み手の視点は「奴隷」を見下ろす位置に設定されます。
「奴隷」の伏せたまつ毛から、「夏の手配」の香りを乗せた風が周囲全体に 「ゆきわたってゆく」様子を見渡している気持ちになります。

 

[12881]こはくさん

片隅で<奴隷>を思いつつほぐすコンソメ固形スープをふたつ

「奴隷」と「コンソメ固形スープ」の間の繋がりは、作者しかわからない (もしくは、作者にもわからない)かもしれませんが、心惹かれた一首。
日常の中で何かの動作をしているとき(それが習慣化されたものであればあっただけ)、 その最中にふとまったく関係のないことを考えている。
そういうことはよく覚えがあります。
たとえば、お湯の中の固形スープをほぐそうと、匙の先でコツコツと押しているとき。
頭の片隅では奴隷のことが浮かんでいる。
とても不思議な状況です。
ただ、固形スープがなぜ「ふたつ」なのか、また、奴隷を「<>」で囲んだ必然性がわかりにくいように思いました。

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