073:廊

[20388]村上きわみさん

(回廊にひかりを招き入れているしずかな歩幅)あなたでしたか

私は、この「あなた」を霊魂だと読んでみました。
作中主体の大切な人なのでしょう。
光に満ちている回廊の舞台設定が映像的です。
「しずか」なのは歩く音ではなく、「歩幅」だという表現が面白いですね。
しかもその「しずかな歩幅」でもって、光を回廊に引き連れてくる。
「あなた」の歩幅を知っている作中主体は、きっと何度も「あなた」の隣に並んで歩いていたのだと思います。
故人(霊)との再会の歌だと詠むと、空間の濃密さがぐんと増すように感じます。

 

[23005]加藤苑三さん

いっそすれ違っていたいときだから渡り廊下に立たせてください

「廊下に立っていなさい」という教師の叱責を、ドラマやマンガ以外で耳にしたことはないのですが、 ここでの「廊下に立たせてください」というお願いはその定番の台詞を逆手に取っていて、なおかつチャーミング。
私は、恋愛の歌―想い人と「すれ違っていたい」から、廊下に立たせてほしいと言っている―だと読みました。
「渡り廊下」という単語の持つイメージ(宙に浮いている廊下/ふたつの建物を繋いでいる)も重要な役割を担っていると思います。

 

[23036]紅茶さん

青春です。廊下からしか校庭が見えないつくりの学校にいて。

この世界の切り取り方が好きです。
閉塞感もまた、「青春」を表すものなのです。
学校の風景、昼下がりの廊下、廊下の窓から下の校庭を見ている制服姿の少女、その表情…
それらを映画のワンシーンを観ているように想像しました。
高校時代、私は校舎のどこから校庭を見下ろしていたのだろうかと思い出しながら。

 

[11828]みうらしんじさん

あのころのぼくがよぎるよ今日もまた廊下できみをふりむけなくて

とても懐かしくて切なくなりました。
こうした記憶は、誰の心の中にも埋もれているのではないでしょうか。
私が思い浮かべた「あのころ」は、高校時代です。
職員室や音楽室のある棟と、教室のある棟とを結ぶ渡り廊下。
そこで「きみ」とすれ違う偶然の度に、ドギマギとうろたえていた日々を思い出します。
詠まれているのは「今日」ですが、気持ちは「あのころ」に戻ったまま、廊下に置いてけぼりになってしまいました。

 

[14271]牧野芝草さん

階段を上ったところに活けられて廊下を朱く照らすほおずき

情景がふうっと目に浮かびます。
「階段」「廊下」「朱く」「ほおずき」といった単語が、それぞれ響き合って、ひとつの空間と時間をつくっているようです。
ほおずきは確かに、ランプのような形をしていますよね。
あの朱色は、よく磨かれた木の廊下に映えると思います。
足元から目を上げたときにほおずきを見つけたら。
照らされているのは廊下ではなく、作中主体の心なのかもしれません。

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