074:キリン

[14926]高澤志帆さん

ひさかたの空を仰いでばかりなる東京タワーはキリンの末裔

[24228]岡村知昭さん

目的地東京タワーまで歩くキリンの首に秋の夕暮れ

「キリン」を「東京タワー」とともに登場させた二首を取り上げます。
初めて東京タワーを目にした夜、私はそのライトアップされた美しさにすっかり心奪われたままでいるので、 東京タワーを詠み込んだ歌は自動的に好き度が増すような気がします。


[14926]
東京タワーが実は「キリンの末裔」である、という説が素敵ですね。
なんと幸福で孤独なキリンなのでしょう。
そうか、東京タワーは上ばかり見ているのか。
いつか、黄色と茶色の斑模様に帰られる日を待ち望んでいるのかもしれません。
「ひさかたの」という枕詞と「末裔」の語の強度が共鳴し合っているように感じました。


[24228]
こちらのキリンは、東京タワーを目的地として、秋の街を歩いています。
時間は夕暮れ時、風が冷たくなってきました。
長い長いキリンの首にマフラーを巻いてあげたくなります。
けれど歌の中で首に巻かれているのはマフラーではなく、「秋の夕暮れ」そのもの。
詩情あふれた表現で一首がうまくまとめられています。

 

[14867]新田瑛さん

〈ご注意〉キリンの黒はシールです。剥がないでください。 創造主

うわー、なんて可愛い!
そうかそうか、あの黒斑はシールで貼っているだけだったのか。
でもそう言われると、剥がしてみたくなるのが人間だと思います。罪深いですね。
「創造主」なのに、人間に敬語を使っているのもユーモアがあります。
まるでアパートの玄関の掲示板にあるような「〈ご注意〉猫が入りますので、 扉はきちんと閉めてください。 管理人」と書かれた張り紙と、同じ重さであるところが楽しいです。

 

[14411]遊木さん

ももいろのキリンを待っていたかったずっとこの場所ずっと一人で

[14272]牧野芝草さん

ももいろのキリンの首が濡れている深夜映画のフランスの街

偶然にも、「桃色のキリン」という共通の発想をした二首。
このお題での私の短歌は
>強大なキリンが駆ける校庭は砂埃さえ桃色だった
というものなので、親近感を覚えたのです。
私のキリンの歌は、「小学校の校庭を、桃色の体毛をした巨大な(三階建ての校舎と同じくらいの高さだった) キリンが暴走する」という、かつて自分が見た夢の風景をそのまま起こしたものなのですが、 なぜ「キリン=桃色」だったのかは今でも謎です。
上のおふたりはどうなのでしょうか。


[14411]
とてもセンチメタルな一首ですね。
しかしこの場合、「この場所」をあえて具体的に確定してしまったほうが、切なさが、 ぐっと日常の自分に近づくのではと思いました。


[14272]
キリンと言えばアフリカ、というイメージをいわば逆転させた情景提示。
「ももいろのキリン」がいるのは、映画の中の空間なのでしょうか。
雨が降っているのかな?不思議な物語がふくらみます。

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