075:あさがお

[26046]mintさん

あさがおがひらく速度で書きあげた暑中見舞いを渡しにゆきます

とても爽やかで、鮮やかな一首ですね。
自転車に乗って、急いで想い人に「暑中見舞い」を届けに向かう様子を思い浮かべました。
「あさがおがひらく速度」というのが速いのか遅いのかは、読み手の感覚に委ねられていると思いますが、 赤色や青色のあさがおの花がパァっと開く情景は、作中主体の心情そのものを表しているのでしょう。
その「速度」は暑中見舞いを書きあげる行為だけでなく、それを渡しに行く(ポストに投函するのではなく、 直に手渡す)ときの走るスピードにもかかっているように感じました。

 

[21181]ひぐらしひなつさん

    二度と泣かないわたしのために路地という路地にあまねくひらくあさがお

「私を中心に地球は回る」ではないですが、「わたしのために」あさがおは開いているのだ、 という主張―しかも、「路地という路地」すべてに―が作中主体の背負っている何かを象徴していて、心惹かれた歌です。
「二度と泣かない」と言い切らなければならなかった何かがきっと、「わたし」には起こったのです。
また、「あまねくひらく」という音の重なりが面白かったです。
音数で言えば、77577の形を取っているのですが、この音の重なりと「路地」の繰り返しによって、 リズムがスムーズに結句まで流れていると思います。

 

[19806]しんくわさん

あさがおのつぼみの先を触ること禁じて家庭教師は帰る

なんでなんですか、先生。 と、思わず追いかけていって、その家庭教師に問いただしたくなる言葉ですね。
「あさがおのつぼみの先を触ること」が学力の低下に繋がるとでも言うのですか、と。
このように、一首の中で「あさがおのつぼみ」は何かしら秘密があるようなアイテムとして登場しています。
けれど、圧倒的な存在感を示しているのは、朝顔の花そのものではなく「家庭教師」。
この家庭教師のようなキャラクター性の面白さが、しんくわさんの持ち味のひとつだと思います。

 

[17086]田丸まひるさん

土星からあなたに送るあさがおのつぼみの中の告白の歌

「あさがおのつぼみ」が花開いたら、その中から「告白の歌」が飛び出してくるのでしょうか。
とても可愛らしくファンタジックな相聞歌です。
宇宙空間を越えて、地球の「あなた」の元へと届けられる鉢植え。
送るのが惑星からという設定が一首の核になっています。
「土星」の「土」が、植物であるあさがおを連想させます。
調べてみたところ、土星はローマ神話ではサターンの象徴であり、不幸と憂鬱を意味するそうです。
そう思って読み直してみると、また違う印象を受けますね。

 

[11359]我妻俊樹さん

あさがおの蔓で私が動けない隙に切符を拝見されます

流れるような言葉のリズムが楽しいです。
「切符を拝見されます」という文章のねじれが、一首全体に軽やかなユーモラスを与えているようです。
最初、マンガのような図を思い描いたのですが、ここでいう「あさがおの蔓」や「(拝見されてしまう)切符」が 何かの比喩なのだと思ったら、また違った見方が広がりました。

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