084:抱き枕

[22693]なかはられいこさん

抱き枕いつつあつめてくみちゃんは入眠儀式のろうそくともす

くみちゃん―私は、マッチのつけ方を覚えたばかりの小学中学年を想定しました。
彼女の「入眠儀式」に必要なものは、ろうそくとろうそく立てと、マッチ箱 (ライターではだめ、などとくみちゃんは決めていそう)、そして「いつつ」もの抱き枕。
第三者(くみちゃんの両親など)から見れば、すべてが不可解な行動なのかもしれません。
この儀式が日々のライフサイクルにおいて必要不可欠なのだ、と信じる気持ちが強ければ強いほど、 少女の愛らしい頑なさと危うさ(火を用いることにも)を感じさせ、それが詩になっているのだと思います。

 

[24993]ただ(夛田 真一)さん

抱き枕をナイフでざくざく切り刻む。部屋が散らかったので掃除する。

詠われている内容の濃さと、淡々と事実だけを述べているような口調とのギャップに惹かれました。
一体、作中主体の身に何が起こったのでしょうか。
枕(羽毛の詰められた)にナイフなどを突き立てるというシーンは、映画やドラマで見られますが、 この歌の核になっているのは下句ですね。
劇的な情景から一転、時間を置いたのか、冷静になった「私」は自分のせいで散らかった部屋を掃除するという、その皮肉さ。
しかし、上句と下句それぞれの主体が同一人物なのだということに、どこか背筋がひんやりともしたのです。

 

[21739]ひぐらしひなつさん

包帯を巻きなおすように抱き枕くるんで月の下ではひとり

やはり、この一首の核になっているのは、第一句・第二句の比喩表現でしょう。
読んでいて、はっとさせられました。
「包帯を巻きなおす」という行為が持つ意味合いやイメージが、読み手の頭の中で、 作中主体にとっての「抱き枕」の存在意義に連想されていきます。
さらに、下句で「月光」の冷ややかさが加えられ、一首の独特の世界観を生み出しています。

 

[18230]佐藤りえさん

抱き枕的に抱えたラジオからトランジスタの最後の悲鳴

作中主体は寝転んだまま、腕の中にラジオを抱えています。
壊れかけた古いラジオなのでしょうか。
「トランジスタの最後の悲鳴」は、作中主体その人の悲鳴でもあるのかもしれません。
ノイズのようなざらざらとした「悲鳴」は、痛々しいまでの孤独感を帯びて響いてきました。
カタカナ表記の「ラジオ」「トランジスタ」から感じる視覚的な鋭利さが、「悲鳴」の音声にもかかっているように思います。

 

[8213]斉藤そよさん

やすっぽい悲しみに暮れる抱き枕だいて眠ってあげる おやすみ

「眠ってあげる」が一首を特徴づけています。
誰かにそう告げているようで、同時に、孤独を強く感じさせる言葉。
ただ、「やすっぽい悲しみに暮れる」がどこにかかるのかがわかりにくいように思いました。
そして、そこまでとそれ以降の文脈が少しずれているような。
悲しみに暮れている「私」と、眠ってあげる「私」が違う人に感じます。
常套句のような「やすっぽい悲しみ」はあえて使っているのでしょうか。

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