085:再会

[24278]岡村知昭さん

再会はかなわぬものか柿の木の下で誕生日を迎えおり

下句の句跨りによるリズムの崩れを、上句のカ音の繰り返しが効果的に補っています。
「柿の木の下」で「誕生日」を迎えているという場面のおかしみ。
全体を漂っているのは哀しさや諦めの感情ですが、こうしたおかしみが岡村さんの作品の特徴のひとつだと思います。
作中主体にとっての「柿の木」は「再会」の目印だったのでしょうか。
けれど今は、たったひとりでそこに立ち、何度目かの誕生日を迎えているのです。

 

[23352]岩崎一恵さん

再会は一度きりです北西に流れる星を見たなら 走れ

映画のキャッチコピーのように鮮やかな一首です。
私は冬の夜を想定しました。
流れ星を肉眼で認識できるほど空気のきれいな場所で、きっと周囲には民家も少なく、 頭上の星のまたたきが聞こえてきそうな、そんな夜。
「北西」には何か意味があるのでしょうか。
そして、走るべき方向も「北西」なのでしょうか。
街灯の間隔が広い道路を、マフラーをなびかせながら駆ける姿(青年かな)を想像します。

 

[22694]なかはられいこさん

それまではいっしょにいよう春楡と風が再会するのを見よう

物語性の強い歌だと感じました。
「春楡(ハルニレ)」の木と風が再会する、という表現の詩的な美しさ。
けれど、その再会の場を一緒に見た後、作中主体は誰かと別れることになるのです。
一方で春の到来を告げる「再会」があり、その裏側では定められた「別れ」があるというシニカルさ。
「それまではいっしょにいよう」という投げかけの言葉は、優しい響きで伝わっても、 その内容は冬の季節のような切なさに溢れています。

 

[18358]田丸まひるさん

少しずつ延ばすきみとの再会の約束もっと飢えてください

きっと、作中主体自身も「きみ」と一日でも早く再会したいのだろうな、と思います。
けれど「もっと飢える」ために、その「再会の約束」を先延ばしにする。
「少しずつ」というのもポイントになっていますね。
約束の日が延ばされるたびに、作中主体と「きみ」はそれぞれ、会いたいという気持ちをより強くしていくのでしょう。
「飢える」という表現に、恋心の中の切なさがぎゅうっと込められていると感じました。

 

[16522]鳴井有葉さん

もし再会したらあなたは幸せでありますように街灯、粉雪

美しい舞台設定。作中主体の心もなんて美しい。
街灯や粉雪といったアイテムも情感豊かです。
このような願い(「もし再会したらあなたは幸せでありますように」)は、 もし別れた恋人に、というのであればなおさら、素直に響くことが難しいように思います。
しかしこの一首では、揶揄や皮肉の気持ちが欠片もないような、「粉雪」のように柔らかく白い心を感じます。
繰り返し唱えたくなるよう歌です。

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