087:混沌

[23831]加藤苑三さん

混沌、それはそれとしてトム&ジェリー仲良くけんかしな。(祈り)

私は子どもの頃、『トム&ジェリー』のアニメをよく観て楽しんでいたので、この歌にはくすりと微笑ましい気持ちになりました。
そう、彼らにはいつも「仲良くけんか」していてほしいなぁと。
音数で見ると、「こんとん/それはそれとして/トムアンド/ジェリーなかよく/けんかしな いのり」と48578音で切るのでしょうか。
(もしくは、トム&ジェリーは「トムとジェリー」と読むのかも)
リズムを整える意味でも、作者は句読点や(カッコ)を意図的に使用しているように思います。

 

[23023]田中槐さん

ここからは混沌だから靴下は脱いでください。さよならわたし

結句「さよならわたし」のインパクト。
目に見える境界線としての「混沌」の提示。
その「混沌」と、靴下を履いた状態/脱いだ状態との関連性。
これらの要素が、この一首の詩性を支えています。
靴下を脱ぐように言い渡している人物も、「わたし」自身であると考えました。
「ここから」向こう側(=混沌)とこちら側の、どちらが現実世界なのかはわかりませんが、 「わたし」はふたりに別れて、それぞれの世界に足を踏み入れているのではないでしょうか。

 

[22592]杉山理紀さん

順番をくるわせながらくちづけて あまい惑星 とける混沌

「あまい惑星 とける混沌」は、化粧品のコマーシャルに使われそうな魅力的なキャッチフレーズですね。
用言と体言を組み合わせるセンスが素晴らしいです。
くちづけるときに「順番」があるのだとしたら、それは無意識のものなのではないかなぁ。
その無意識を狂わせるという、意識。
もしくは、恋人同士のふたりには、くちづけの順番(どこにくちづけるかという場所?)が決まっているのかもしれません。
「くるわせる」「あまい」「とける」といった言葉が、「くちづけ」の形容となっているようで、 とてもドラマチックな歌となっています。

 

[18233]佐藤りえさん

混沌のその中で手を掴み取る ごらん、燃えあがる橋桁だ

下句のドラマチックな展開に惹かれました。
映画に出てくる台詞のような格好よさ。
なんとなく、『風とともに去りぬ』を思い出しました。
「ごらん」と言われたとき、きっと読み手の目の前にも「燃えあがる橋桁」が現れるのでしょう。
燃え盛る木材の音だとか、橋桁がゆっくりと崩れていく音、炎の熱がこちら側まで伝わってくるような感覚を覚えました。
橋桁の「燃えあがる」様子と、上句の「混沌」とがリンクしているように思います。

 

[12657]五十嵐きよみさん

長雨があがるのを待つ週末に豆のスープは混沌として

今回のお題「混沌」のような抽象的な言葉は、短歌に詠み込むのが難しいのではないでしょうか。
その中で、作者は「豆スープ」を発見しました。
混沌としているものの象徴が豆スープとは、意外性があり、それでいて不思議に説得力があります。
豆スープを見下ろしている姿からは、長雨に閉じ込められた部屋にいる閉塞感をも感じさせます。

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