088:句

[26036]平岡ゆめさん

句跨りいくつも重ねていくようなエレベータは六階にいる

比喩に円熟した味わいのある一首。
「句跨りいくつも重ねていく」とは言い得て妙だなぁと思いました。
短歌に親しんでいる者であれば、その面白さがより伝わるという趣向が興味深いです。
結句の処理の仕方が言い切りというのもいいですね。
ただ、「エレベータ」は「エレベーター」と表記したほうが、音数も揃っていいように思います。

 

[25458]荻原裕幸さん

句点やたらに少なきてがみ悲しみが隙間に入りこまないための

77577の形の一首。
一読後、「そうか、そうだったのか」と納得しました。
句点や読点の少なさを人の心のうちの象徴として詠う歌はこれまでいくつかあったかと思いますが、 それは「悲しみが隙間に入りこまないため」であるという答えには、強い説得力があるように感じました。
そして作中主体は、そんな「てがみ」を書いた側ではなく、受け取った側だと捉えました。
「悲しみが隙間に入りこまない」ように、句点を使わなかった「君」からの手紙だけれど、 それでも滲み出てきてしまう「悲しみ」を感じ取ってしまったのだろう、と。

 

[21348]村上きわみさん

「おはよう」を発句のように投げあってそれぞれ朝をつなぎはじめる

発句→連歌→「つなぐ」という言葉の連想が巧みです。
(発句というのは、和歌や連歌・俳諧の初句のこと)
各々が浴びている「朝」を、挨拶によって繋いでいるという表現には、希望の光のような明るさを感じました。
そして、「おはよう」と声を掛け合うことを「発句」と見たその比喩が斬新で、読み手にもパッとイメージさせます。
「発」の漢字が、声を発する様子を喚起しているのだと思います。

 

[18234]佐藤りえさん

果樹園にぽろぽろ実る作物が句読点めく日暮れをあゆむ

実り多い秋を描いた、印象派の絵画のような世界を思わせます。
「ぽろぽろ実る」という表現が可愛らしく、「句読点めく」の比喩にも巧く繋がっています。
果樹園の木々に実る果実、重力や風に耐えかねて落ちた果実。
夕日の赤に照らされながら、それぞれが句点読点のように散らばっている情景。
最後、「あゆむ」と、作中主体自身の動作に焦点があてられる形で終わるのですが、 情景の説明で一首を収めてしまう形でも読んでみたいと思いました。

 

[13626]こはくさん

あ。り。った。け。の。句点。を。打っ。て。聞。い。て。やる。君。に。まつ。わ。る君。の。すべ。て。を。。

私はあまり表記を凝らすことはしませんし、そうした短歌が詠み手の狙い通りの効果を 実際にもたらすか疑問に思うときもあるのですが、この一首はとても面白いと思いました。
歌に込められているのは、「君」に対する真っ直ぐな思い。
「聞いてやる」と強がりを言っておいて、「ありったけの句点」を差し出している。
句点である「。」が、作中主体の心象心理を表す物体として、ころころと転がっているように見えます。

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