090:木琴

[24323]岡村知昭さん

ラブレター代わりかどうかしらないが音楽室に木琴がある

もし音楽室に置いてある木琴が、誰かから誰かへのラブレターであったなら、とても素敵な物語だなぁと思います。
作中主体は「どうかしらないが」と、突き放した口調ですが。
木琴の演奏を「ラブレター代わり」にするのではなく、木琴そのものがラブレターであったとしても、 私は一生懸命、両腕で抱えて持って帰るでしょう。
なんてロマンチックで、かさばるラブレター。

 

[17595]大辻隆弘さん

みづぎはに沿つてあなたに運ばれてゆく木琴のやうに乾いて

耽美的で幻想的な歌です。
水(「みづぎは」)は、官能性を表現するキーワードにもなっていると思います。
「あなた」に体を抱きかかえられて、運ばれているのでしょうか。
私は、冬の海岸沿いを舞台として思い浮かべました。
海風の匂いや、寒さで感覚が麻痺しそうな指先や、その分より暖かく感じる「あなた」の体温などを。
「みづぎは」と「乾いて」の相対するイメージが、見えないところで読み手の心に響いていると思います。

 

[10645]天晴娘々さん

あたたかい毛布のやうに、土のやうに、抱きしめた樹のやうに 木琴

なんだかとても、優しく温かい気持ちになった一首。
木琴の比喩が三度繰り返されています。
「あたたかい毛布」「土」「抱きしめた樹」…それぞれが持つ温度が、読み手の心にも伝わってくるのでしょう。
作中主体の木琴に対する愛情を感じさせます。
視覚・聴覚へ畳み掛ける「のやうに」の繰り返しが、一首のリズムを生んでいます。

 

[22381]キタダヒロヒコさん

横抱きの木琴ふいに鳴るけはひ こんなあかるい秋をあるけば

詩的で美しい一首。
「秋」と「木琴」と、詠まれてはいないけれど、落ち葉の散る並木道のイメージが心地よく交わっていきます。
多分、秋の匂いを感じながら街を歩けば、木琴が「ふいに鳴るけはひ」を感じるのだろうなぁ。
ただ、木琴を「横抱き」にする必然性を、もう少し明確に感じられたらと思いました。

 

[18236]佐藤りえさん

たいらなるむくろのように木琴をたてかけている骨董店舗

木琴を死骸にたとえて詠んだ一首。
私はこのお題では、
>アザミ野に少年たちは木琴のような姿態で眠り続けた
と、眠る少年の姿を木琴に重ね合わせ、そこに「静かな生」を見たのですが、この歌では逆に「死」を見い出しています。
生と死は二律背反、そのどちらをも思い起こさせる木琴。
その理由は、生命を持った「木」から作られるからではないでしょうか。
もしお題が鉄琴だったら、まったく違うイメージの短歌が生まれているのでしょう。
「たいらなるむくろ」の静かさ。
音が鳴る楽器だからこそ、その静かさが引き立たれるのです。

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