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[26192]星川郁乃さん

葬列はまだ延々と続くだろう 見慣れた読売明朝体で

実際に、作中主体の目の前に「葬列」に並ぶ人々がいるのかと読んでいたら、下句で視界をぱっと切り替えられた印象。
「読売新聞」のお悔やみ欄を詠んだ歌なのですね。
新聞の文字が、「読売明朝体」という言葉によって、一瞬にして目に浮かびました。
言葉選びのセンスの高さを感じます。
「延々と続く」のは、葬列の長さではなく、人の死そのものを指しているのかもしれません。

 

[23556]岩崎恵さん

葬列はどこまで続く 春の日の丘にたたずむ白い人たち

これは不思議な歌ですね。
葬列に並ぶ人たちは、もちろん黒色の服(喪服)を着ているのが通常であるのに、ここでは「白い人たち」となっています。
もしかしたら、表情や精神状態を白色にたとえているのかもしれませんが、私は、 真綿色やエッグシェル、アイボリーといった様々な色合いの白をまとった何人もの人たちが、 丘の上に立っている情景を思い浮かべました。
「春の日の丘」と「葬列」との距離感の大きさが、一首の焦点となっていると思います。

 

[23764]村上きわみさん

葬送の列にまじわる 冬蝶のふるえる翅をあたためながら

瑞々しい感性で詠われた詩的な一首。
少女文学の挿絵を思わせる世界観です。
「葬送」「冬蝶」「翅」…
人の死と蝶とのイメージの結合は美しくはかなげで、それぞれの言葉(漢字)が、 まるではじめから決められたパズルのパーツのごとく、読み手の心の中で繋がっていきます。

 

[18868]千坂麻緒さん

渋滞の車列のライト滲ませる雨雨、どうぞ無事に帰って

優しい視点の歌ですね。
渋滞に巻き込まれている当事者の気持ちになって読みました。
夜の高速道路、前にも後ろにも延々と並ぶ車の赤や黄色のライト。
その光が雨雫に滲んで、いくつもガラスにくっついては流れ落ちていく。
「雨雨」の繰り返しが、そんな様子を想像させます。
「どうぞ無事に帰って」というのは、家で待つ家族の言葉ではないでしょうか。
テレビで渋滞のニュースを見ているのかもしれません。
帰りを待っていてくれる人がいる幸せをしみじみ感じさせる一首になっています。

 

[24430]加藤苑三さん

ありふれた生活こそが陳列にきっと相応しいはずなのだから

苑三さんの短歌の特徴として、「世の中を斜めから切り込む視点」を挙げることができると思います。
この一首も、「相応しいはず」という断定はそのまま作者の本心とは言えないのではないか、 本当は反語なのではないか、と思わせるところがあります。
「陳列」とは、他人によく見せるための装飾。
この言葉が一首にひねりを与えているのです。

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