096:類

[26200]星川郁乃さん

ゆっくりとゆっくりとなら怖くない全人類が滅亡しても

とても好きな歌です。
上句までは「何のことだろう」と思って読み進めていき、下句でぐっと心臓をつかまれたかのような感覚になりました。
非現実的なことを詠っているのに、妙に説得力があり、まるでそれが真理なのではないかと感じさせる力がある一首だと思います。
ゆっくりと、優しい声で朗読してもらいたい、そんな歌です。

 

[23759]ひぐらしひなつさん

真夜中の魚類図鑑を抜け出してひれとひれかさねあえば月が

ファンタジックな歌ですね。
初句の入り方も自然で巧みです。
人っ子ひとりいない、静まり返った図書館が舞台でしょうか。
月明かりだけの薄暗い図書館、角の図鑑コーナーの棚から、魚の飛び跳ねる音が聞こえてきそうです。
読んでいくと、この一首の作中主体が「魚類図鑑」の魚自身であることがわかります。
一匹の右ひれと左ひれでしょうか。
私は、二匹の魚がそれぞれのひれとひれを重ね合わせている様子を思い浮かべました。
そのとき、「月が」さらに輝きを増すのだ、と。

 

[23248]氏橋奈津子さん

手をつなぎかわるがわるに夏草の種類を挙げる就眠儀式

「就眠儀式」という言葉から、お題「084:抱き枕」でのなかはられいこさんの歌、
>抱き枕いつつあつめてくみちゃんは入眠儀式のろうそくともす
を思い起こしました。
「くみちゃん」はきっと一人きりの儀式だったろうと思われますが、こちらの歌では、 もしかしたらクラスメイト全員(林間学校かも)で儀式に臨んでいるような、そんな気がしました。
体育館のような広い場所で、みんなで手を繋ぎ大きな輪になって眠ろうとする様子を想像します。
「夏草の種類」というのが爽やかで、でも何か魔術的なもの (翌日、みんなで炒ったり煎じたりしそう)も感じさせるキーワードになっていると思います。

 

[14235]我妻俊樹さん

すこしくらい長いひる寝を人類にしっぽが生えそろうまでの夏を

言葉の選び方や世界の切り口がオシャレですね。
一読後、「人類にしっぽが生えそろうまで」昼寝をしよう、と言っているのかと思ったのですが、 読み返してみると、「〜ひる寝」と「〜夏」のふたつは並列しているのですね。
その両方を、二人称に向かって「一緒に過ごそう」と投げかけている相聞歌だと捉えました。
「すこしくらい」という言い方のライト感で、「ひる寝」を。
人類にしっぽが生えることはないことをわかっていつつ、だからこその際限のない「夏」を。
ここはやはり、夏以外の季節だと印象が変わってしまいますね。
夏が最適だと思います。

 

[24525]加藤苑三さん

さわやかに終われるはずもないふたり 柑橘類を持っても無駄だ

結句の有無をも言わせぬ言い切りが、別れを詠った一首でありながら、妙に清々しく感じました。
世界中、数多の別れがある中で、「さわやかに終われる」関係なんてそうそうないのでしょうね。
「柑橘類を持っても無駄だ」という言葉は突き放しているようでいて、その事実から救ってくれているような気がしてきます。
ただ、「さわやか」と「柑橘類」はすぐに連想が繋がってしまうので、その間にもう少しイメージの飛躍を見たいように思います。

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