099:絶唱

[25994]玲はる名さん

この恋の語尾を絶唱するならば燃える棺のなかでありたし

とてもエネルギッシュな相聞歌ですね。
恋の終焉を、燃え盛る棺の中で絶唱したいという。
「絶唱」「燃える棺」の凄まじさが、作中主体のこの恋にかける想いの深さを表していて、胸を突かれます。
「語尾を絶唱する」という表現の独創性もいいですね。
語尾というだけで、恋が終わっているのだと読み手に感じさせる効果があると思います。

 

[23771]村上きわみさん

  父に


ゆっくりと世界に別れを告げていた とても静かな絶唱でした

痛いくらいに美しい歌。
作中主体(作者自身?)が父親を失ったときの、その瞬間の感情がぎゅうと圧縮されて歌になっていて、 だからこそ読み手の心にまで突き刺さる力を持っているのだと思います。
上句と下句がそれぞれ魅力的で、それが違和感なく繋がっています。
とくに、上句が印象深く、「父」の最期の呼吸や脈拍を感じさせる表現だと感じました。
それぞれの言葉が他に代替不可能な気がします。

 

[22876]なかはられいこさん

絶唱に濡れてしまった胸部から赤いリボンがするする伸びる

「絶唱に濡れる」という表現の斬新さが素晴らしいですね。
視覚的にも鮮やかな印象を受ける一首です。
絶唱に胸を打たれた様子を表しているのでしょうか。
その感動で、鮮血のように「赤いリボン」が胸から伸びていく。
作中主体の主観の世界に、読み手を引き込んでいます。
「するする」とリボンが伸びるように、絶唱もまた伸びやかに響いているのでしょう。

 

[19126]池まさよさん

歯を磨きながら冷蔵庫の絶唱きいていました 日曜の夜

冷蔵庫の奥から聞こえてくる低く唸るような機械音。
それを作中主体は「冷蔵庫の絶唱」だと言っています。
とても巧みで、かつホラーの要素も感じさせる比喩だと思います。
普段と変わらない夜、普段と変わらない歯磨きの時間。
なぜか妙に耳につく冷蔵庫の音。
それはまるで歌声のように聞こえたのでしょう。
日常の中に潜んでいる、非日常への扉が開いてしまったかのような、そんな場面を詠んだ一首です。

 

[22604]春村蓬さん

いつの日かそれは花の雨のやうに降つてくるやもしれぬ 絶唱

「絶唱」という言葉に、私はどこか痛々しいまでの思いの強さを感じているのですが、この一首からは「美しい優しさ」を感じました。
「やもしれぬ」という語尾と、一首全体を包む柔らかさのようなもの。
それらが、私の感じる痛々しさを和らげているのだと思います。
雨のように空から降ってくる無数の花びら…本当に美しい情景でしょう。
断定はされていませんが、きっと「降つてくる」だろうという明るい希望を感じさせてくれます。

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