100:ネット

[23894]石川美南さん

秋雨が肩に描ける文様の消えては増ゆるネット友達

秋雨が肩につくった滲みを「文様」と喩えたところに強く惹かれました。
「秋雨」と「文様」と「ネット」という、一見バラバラの単語の関連性を読み手に投げかけてくる面白さがあります。
「文様」から感じる奇妙さや不可解さが、ネットにかかってくるのかもしれません。
第四句までの言葉のニュアンスの硬さと、結句「ネット友達」とのギャップが、一首のキーになっていると思います。

 

[23252]氏橋奈津子さん

夢からの風にふるえるくちびるのインターネット・エクスプローラ

「インターネット・エクスプローラ」という単語が、どこか違う文明の呪文のような響きを持っているように感じられました。
震える唇で発せられる「インターネット・エクスプローラ」の音。
もしくは、「インターネット・エクスプローラ」と発声することによって、唇が震える様子を詠っているのかもしれません。
「夢からの風」とは、何を表しているのでしょうか。
夢という言葉のはかなさが、インターネット社会の背景に潜んでいるような、そんな感覚を覚えました。

 

[25286]杉山理紀さん

ボンネットぱかんと開けて複雑なことはさておき誕生日月

「ネット」というお題を、インターネットという意味以外で詠み込んだ歌。
あっけらかんと明るい雰囲気の流れる一首になっています。
ドライブの一場面(エンジントラブル?)でしょうか。
「複雑なこと」=車の故障(メカニズム)だけでなく、作中作者を取り巻く日常の細々すべてと取りたいです。
今はもう全部置いておいて、誕生日月であることをまず楽しみに思おうではないか、 と背伸びをするように。
「ぱかん」という擬音語が、「さておき」と言っている作中主体の気持ちを象徴しているようです。

 

[24531]加藤苑三さん
    ネット歌人さよならばいばい、また明日。名前は誰かがつけたものだよ。

リズムよく流れる上句から、下句への転換が示唆的。
「さよならばいばい」と突き放した感覚と、「また明日」の親しみさが混在しているように思います。
「名前は誰かがつけたもの」という表現は、ネット歌人のHNのことを表しているのでしょうか。
自由で万人に開かれた空間としてのインターネットにおいて、個人を指し示す記号(=名前)が持つ意味とは何か。
ネット上かどうかに限らず、人名に限らず、この世界の万物には「名前」がついていて、 それは初めから自明のものとして存在しているのではなく、誰かがいつか人工的につけたものなのだと、改めて認識させられた一首です。

 

[24385]田丸まひるさん

ネット越しだけれど分かる今きみの唇はキスのかたちをしてる

愛らしい恋人同士の歌。
とても素直な調子で詠われていて、その素直さがそのまま作中主体の心を表しているようです。
電話越しではなく、現代は「ネット越し」なのですね。
「今きみの唇はキスのかたちをしてる」のだという、不確かなのになぜか強い確信こそ、恋愛をしている人のものなのだと思いました。

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