blue bird 04

彼女は自分のことを「感謝ちゃん」と呼んで、と言った。
本名は「さいとうりうこ」といった。
小学校に上がる前、どちらがより自分の名前をきれいに書けるか、という勝負をしたことがあって、 そのとき感謝ちゃんは、小さく可愛い字で「さいとうりうこ」と書いた。
「う」と「り」のカーブが逆になっていたけれど、それを指摘すれば多分、彼女は泣き出してしまうだろうから、 僕はとりあえず
「感謝ちゃん、うまいね。すごいね」
と大げさに褒め称えた。
僕は、感謝ちゃんはきっと得意げな顔をするだろうなと思ったけれど、恥ずかしそうにうつむいたので、ちょっと驚いた。


僕は物覚えのいいほうだ。
この街に戻ってきたときに、自分の家があった場所、商店街のペットショップ、 怖い酔っ払いのおじさんの家、ボロボロの駄菓子屋、水色のブランコのある公園、 それらがどこにあったのかをすべて忘れずにいた。
だから、彼女のことだって、けっこう覚えている。
感謝ちゃんの家には、違う表札がかかっていた。

ブランコを漕いでるうちは泣きまねをしない約束しない約束


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