blue bird 06

大学生活は、今のところ順調に進んでいるように思う。
図書館二階の奥の机が、大学の中で僕が一番気に入っている場所だ。
そこの窓からは、中庭のポプラの木がよく見える。


記憶力のいい僕は、感謝ちゃんといた街に戻ってきて、彼女のことをたまに思い出して生活している。
たとえば、僕の家の狭い庭での、かわいい昼食会のこと。
ゆで卵の黄身は喉に詰まるからと、彼女はいつも白身だけを剥いて食べていた。
そして、残った黄身を大事そうに、まるで宝物を扱うように注意深く、そっとお皿の上に置くのだ。
たとえば、夏の雨の日。
感謝ちゃんのレインコートは、きれいな藤色だった。
大人びた色だ、と僕は思っていたけれど、彼女はその色の慎み深さを気に入っていて、雨の日以外にもよく着ていた。


もう、多分、決して会うことはないだろう女の子。
彼女が確かにいた街で僕は今、夕闇に浮かぶポプラの葉を見ている。

確実なことをいくつか探すうちポプラの影が濃くなってゆく


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