blue bird 11

学食で「太陽くん」を見かけた。
ひとりで座って、ドイツ語の辞書を開いていた。
私は近づいていって声をかけ、今いっしょに、うどんを食べている。


私たちは、再会に驚いたこと、太陽くんが年下だったこと、ふたりとも引越しをしていたこと、 お互いの数年間の出来事を大まかに(でもところどころ、とても詳細に)話し合った。
太陽くんは私が忘れていた、幼い頃の私を、まるで物語の登場人物について話すように、楽しそうに語ってくれた。
青年になった太陽くんは、青くも黄色くもない、濃いグレーのシャツを着て、長い脚を持て余すようにときどき組み替えた。
太陽くんが生きていたことに、私はあらためて感動している。


私は太陽くんのことを「岸くん」と呼び、太陽くんは私のことを「斉藤さん」と呼んだ。
そして、「太陽くんと感謝ちゃん」の物語を、次の講義が始まるまで話し続けた。
うどんはちっとも減らない。

黄色い蝶と白い蝶とがくるくると低空飛行をしている野原


                                        >>

01  02  03
04  05  06
07  08  09
10  11  12
13  14  15
16  17  18
19  20  21
22  23  24
25  26  27
28  29  30


back


© Umi Sato All Rights Reserved.