blue bird 12

図書館で「感謝ちゃん」を見かけた。
本を数冊、細くて白い腕に乗せ、まだ何か探しているようだった。
かがんだ拍子に、腕の中から本がこぼれ落ちる。
僕は駆け寄って本を拾うのを手伝った。
ひそひそ声で「大丈夫?」と声をかけながら。


僕らは図書館の入り口、新聞閲覧室のベンチに座った。
ゼミのレポートのために本を探していること、次のゼミで発表することになっていることを、彼女は眉を少し寄せて話した。
話を聞いている間、彼女のおでこが変わらず聡明そうだと思っていた。
低めの鼻には、薄茶色のソバカスが見える。
幼い頃の感謝ちゃんには、ソバカスがあっただろうか。
「そろそろ行くね」と言って、彼女は立ち上がり、軽く背伸びをした。
「うん、じゃあがんばって」と僕は言う。
僕はすっかり、ひとつ年上の彼女に敬語を使うのを忘れている。


お気に入りの、二階の奥の机の窓から、中庭にいる彼女が見えた。
正確には、彼女の影が。

十分なものなど何もないのだとそれは優しい確信だった


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