blue bird 14

「牛乳、温めていなかったから」
そう言って、ぬるくなってしまったカフェオレを彼女に手渡す。
彼女は、妙に他人行儀にペコリとおじきをして、それを受け取った。


感謝ちゃんは僕の部屋にいるときだけ、僕のことを「太陽くん」と呼ぶ。
だから僕もそのときだけ、彼女を「感謝ちゃん」と呼ぶ。
帰り道。
僕は彼女を大通りまで送っていくことにしている。
アパートのドアを開けて、外の空気に全身が触れるとき、もう僕らは、幼い頃の名で呼び合うことはしない。
夕方の匂いのする道を、ふたりで歩く。
理宇子さんは、歩きながら歌をうたう。とても小さな声で。
あるとき耳を澄ませて聞いてみると、その歌はメリーさんの羊だった。
なんだかとても彼女らしくて、僕はそっと、気づかれないように笑った。


いつものパン屋の角で、理宇子さんとわかれた。
今来た道を引き返しながら、僕は、飲み終えたカップがふたつ、 テーブルの上に置かれたままの部屋を思い浮かべている。

またあしたうちにおいでよ五百個のクロワッサンを買っておくから


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