blue bird 20

双葉は僕のことを「直史」と呼び、美樹は「なお」と呼んだ。
「これもね、一種の棲み分けなの」
いつだったか、美樹がおもしろそうにそう言った。
彼女たちから与えられる情熱は、まるで純度の高い蜂蜜のようだ。


あるとき、双葉と映画を観に行った。
双葉はヨーロッパの映画が好きだ。
赤い服の女が踊る映画。
愛し合うときも悲しんでいるときも、女は赤い服を着て目を閉じて踊る。
「直史の声が好きなの。会っているときは、できるだけ名前を呼んで」
僕が、双葉、双葉と何度か呟くと、彼女はふるふると目を閉じた。


美樹が裸のまま、ソファに座っている。
僕は下だけ服を身につけ、美樹の正面に寝転んでいる。
「なおの声が好き。だから、本当は、電話でセックスするのでいいの」
彼女は、セックスを「セックス」以外の単語で話したことはない。
顔にはいたずらっぽい笑みが浮かんでいたけれど、声は平らかだった。
美樹はいつだって自由だ。

右手にはマンゴーを持ち左手にイチジクを持つ 夜が明けない


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