blue bird 21

短い秋も終わりそうなこの時期に、海を見に行こうと言い出したのは私だ。 早く、いろいろなことを確かめておかなくてはならない。


砂浜は前夜の雨で、しっとりと固まっていた。
風は冷たく、潮の匂いもあまり感じられなかった。
太陽くんは私の左隣で、さっきから黙って海を眺めつづけている。
私は前を見たまま、「太陽くん」と小さな声でつぶやいた。
彼は「感謝ちゃん」と答えた。
名前を呼び返されるとは思っていなかったので、驚いて横を見上げた。
太陽くんはこちらを向いて、微笑んでいた。


そして、私たちは初めてキスをした。
「私ね、いま付き合っている人がいるの」「僕も」
言い合ってから、もう一度、今度はもっとゆっくりとキスをした。


すべてはあの春の日、再会したときから決まっていたのかもしれない。
確かめたかったことは、何もかも、確かめるまでもなかったのだ。
十本の指が、十本の指を、捕らえるのを待っていただけの時間。

目を閉じてあなたの皮膚に触れるたび私はきっと液体である


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