blue bird 23

「で、理宇子はどうしたいの?」
こんなときでさえ、修くんは冷静な声で話す。
私はいま、人生で初めて、人に別れ話を切り出しているところだ。
修くんはやや袖の長いモスグリーン色のシャツを着てきて、それは彼のお気に入りだった。
ふたりでよく来たカフェに修くんを呼んだ。
曇り空の今日はあまり客もおらず、低く流れるブラームスの交響曲がよく聞こえる。
「好きな人ができた」
第一声にしては、上出来の勇気だったと思う。
どうしたいのかなんて聞かれて、内心、私は焦っていた。
そんなの、答えはひとつしかない。
けれど、なんと言ったらいいのか、頭の中が混乱している。


そんな私の顔を見て、修くんはゆっくり息を吐いた。
この人はため息まで穏やかなのだ。
「好きな人って、俺の知っている人?」
茶色い眼鏡の縁をすっと指で持ち上げながら、修くんは聞いた。

缶詰のチェリーが好きと君は言いそして私は服を着た


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