綿井さんのうた

さようなら白雪姫は息絶えぬ

舞台にあおい日なたを残し


こんにちは予防注射はお早め

に白雪姫が目覚めたならば


ありがとう百科辞典のなかほ

どに一番星のしずくが垂れる


さようなら火葬しましょう

透明なぼくの天体望遠鏡を


こんにちは誰も彼もがとおせ

んぼしている夏の午後の坂道


ありがとう走り書きした文章

がきみの体の余白を埋める


さようなら始業チャイムが鳴り止

んだその後、雲が溶けてしまった


こんにちは手塚治虫の帽子か

ら蝶のさなぎが転がり落ちる


ありがとうあなたの白い両頬に

バビロンまでの地図を書き込む


さようなら鉄腕アトムの足跡が

ブログの端に散らばっている


こんにちは報告書からぽこぽこ

と産まれる黒いカタツムリなど


ありがとう開いて閉じたくちび

るにおみくじ凶を捻り込まれる


さようなら抵抗しなきゃ殴ったり

しなかったのにトムもジェリーも


こんにちはオペラグラスに星型

のラメ入りペンで国籍を書く


ありがとう土曜の朝をあの人は

百合のつぼみに隠してくれる


さようならスパンコールが事務

室の天井までを埋め尽くしても


こんにちは薄暗がりの竹藪で

声をひそめるファックス電話


ありがとうふたりはじっと見つ

めあい互いの羽を毟りはじめる


さようなら朽ちた窓辺で彗星を受

け止めているカフェオレボウル

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